自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

自閉症の渡のアメリカ式バレンタインデー

バレンタインデーの前日。息子は老人のディケアのお手伝いにいく(職業訓練の一環)ということがきまっていました。ここのおばあちゃん達がどうも集まってお茶をする時間があるらしく、渡が随分前から

「バレンタインデーの前日はカップケーキとクッキーを持っていく。」

と何度も言っておりました。そのカップケーキとクッキーの種類、買うお店まで指定してきた。さすがこだわりの自閉症です。まーすごく安いスーパーだったので、ちょっと多めに持たせて、大量のカップケーキとクッキーを持って行った。

そうしたらどうもこの老人ホーム(というかディケア)には、相当数のおばあちゃん達がいて、そのばーちゃんたちに渡は人気者なのだということが判明。長い人生を生きた彼女たちにとって、渡が自閉症なんていうことは、ちっぽけなどうでもいいことのようです。渡は、口頭言語での指示や会話が苦手なので、おばあちゃま達が言われてることがわからない事もあるし、気が着かない事もあるのですが、歳をとれば耳が遠くなって聞こえない事もあるので、そういうのもどうも気にならない様子。

一緒に行かれる人に聞いたら、どうもだいぶ前に、トイレにいくのにこけそうになった人を助けてトイレまで連れて行った事が事の発端。

それがウケた、正しい行動だったと解った渡は、なにかにつけて、おばーちゃんたちにお世話をやいて、食べる時にフォークやスプーンを並べたり、大丈夫ですか?と声をかけたりしているらしい。

3人の男の子が通っているのだけど、渡が一番さぼらずに働き、おばあちゃん達に声をかけるので、それでおばーちゃまたちに人気だと判明。

他の子達は、ちょっと嫌々やってる気配。そりゃそうだわなー。それが普通の気もする。20歳そこそこの発達障害のある子供たち。高機能の子どもさんです。思春期からまだぬけてないような子もいるし。おばあちゃまたちののんびりした速度も苦手だろうし、外で遊びたい盛りだろうし。

そんなこんなで、バレンタインには、おばーちゃまたちから

「渡とお茶をしたい。」

というリクエストがあって、カップケーキを買うことになったらしい。

私が迎えにいったら、渡が男の子一人だけでそのまわりを大勢のばーちゃんに囲まれて座っていた。

ばあちゃま達は私をみるなり、ニコニコと

「あなたが渡のお母さんね。今日は素敵なプレゼントをありがとう。」

と言われた。どうもこのおばあちゃまたちの会話では、渡がトーマスの話をしても誰も怒らないし、怒るどころかニコニコと笑うし、ディズニーランドの話をしてもみんなふんふんと聞いてくれます。

なので、渡も言葉が出やすいみたいです。

車にのせて帰ろうとすると、立上がれる方達全員でお見送りしてくださった。

これは圧巻。すごい。まるでVIPのお見送り。いままでは、学校のクラスの子供でチョコを交換していただけだったけど、今年は渡がお婆ちゃま達にケーキを贈って...ってちょっと違う感じです。アメリカ式のバレンタインだわー。アメリカのバレンタインは、彼女や奥さんにバラの花やお菓子やプレゼントをあげて、多くの人は外にご飯を食べに行ったりします。男性が女性に優しくする日ですね。女性から物をあげるなんてあり得ない訳で。なんだか、ちょっといつもとはかわったバレンタインで、渡も成人男性になったようです。渡もなんだか自慢げに一日が終わりました。

それにしても好きな女性は、ディズニーランドのお姫様の年齢から、ディケアのおばあちゃままでになりそうです。攻撃範囲広いなぁ。