自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

ミュージカルHello,Dolly!を見てきました

香穂がアシスタントマネージャーをやっている劇を大学まで観に行ってきました。シアター学部だけで300人は入るホールを持っているこの大学。すごすぎる・・・。音楽関係はここのホールではなく、別にまた大きなホールを持っているので、そこで演奏されるそうです。


まー本格派。俳優を多く出すこの大学は、シアター学部は特に厳しいようです。これが趣味でなく、授業として成り立っています。香穂の専攻はシアター学部の舞台芸術学科になります。

私は大学に行って、大道具さん・小道具さんを学んでいると思っておりましたが、いえいえそんなに甘いものじゃないことがよーくわかりました。コスチュームから、舞台設計図、照明から、音楽、歴史から、文化、服装、配色、塗り方・・・多方面から舞台を学ばねばなりません。1回の舞台はたった2時間半ですが、まじめに勉強すれば、一生勉強することがあるんじゃないか?と思うほど奥が深い・・。


香穂は私達がサンノゼを出る前に

「友達に渡を紹介したいので、劇が終わっても残ってて!!けど、すっごい片付けや反省会で忙しいと思うので会えないかもしれないけど、その時はごめんねー。」

と言われました。


劇は本格派で、舞台に立つ生徒たちは、すっごい倍率をクリアーして入学しただけあり、声量感やダンスもすごいものがありました。

渡は、このノリのいい音楽を聞いたら、踊りたい。彼は音楽をきいて、怪しい踊りを踊るのが大好きで、いつも音楽をかけてはとんだりはねたりしています。

それを劇をやっている間中、自分で押さえて踊らないようにしないといけないので、全身に力を入れているので、分刻みで体の筋肉が固くなっていくのがわかります。

その苦労が絶頂に達したのは、この曲の時。Put on your Sunday Clothes (日曜は晴れ着で。)

D

これは、映画Wall-eでもでてきた、Walleが大好きな曲です。

それでも体に力を入れて、動かないようにしています。

綺麗なお姉ちゃんをずっーとみていたいし、香穂がこの舞台をつくるのに参加していることを理解しているからのようです。

幕間がやってきたので、すぐに外に連れ出し、好きなだけ踊って跳ねていいと言いました。

もうジャンプしまくり、踊りまくりで、息せききって2部をみることに・・。


感動のうちにスタンディングオベイで劇は終わり、私と渡は舞台袖からスタッフがでてくる出入り口で待っておりました。渡は2時間半の我慢がありましたので、ずーっと飛び跳ねています。

「帰ろー」

とかも言っておりました。


シアター学部にアジア人はいないので、私たちが立っていると入れ替わり立ち替わり、通った人が、

「久保ファミリーに違いないわね?私の名前は○○です。」

とみんなが自己紹介をしてくれます。それで

「香穂は忙しいので、中で声をかけますが、待っててね。」

「あなた達のことは、香穂からたくさん聞いていたわ。あれが弟くんね。」

とみんな優しい、優しい。初めて会う人間にこんなに声をかけてくれるんだ・・すごー。私が大学生の時に、友達のお母さんらしき人が立ってても、会ったこともなければ、自分から自己紹介したりして声はかけなかったぞ。と思いました。

香穂がこの大学に入学する時に

「私は友達を競って蹴落とすようなことをする大学ではなく、舞台という一つのものをみんなで協力してつくりあげていくような大学に入りたい。」

と言った意味がよくわかりました。



しばらくすると香穂が出てきました。

「Aちゃんに会ったんだって?」

「会った。なんかわかんないけど、一杯人に会った。」

「あぁ。よかったよ。あの子は、ヨーローパで育った子で”身体障害は認めるけど、発達障害は訳がわからない。わがままなのよ。認めない。”って言ってた子なんだ。たぶん、見たことないんだと思う。今日初めて、自閉症を見たみたいで、”私は考えてみる”って言ってた。そういう子だからさー。渡と会わせたかったんだ。」

シアター学部の中には、

自閉症の子どもたちや大人達のシアターを真剣に作りたい」

という子もいます。理解度はまちまちで、そういうこともあって、香穂は渡を紹介したかったらしい。まー世界でたった一人の自慢の兄弟ですから(笑)紹介したかったのでしょう。


最後に一人出て来た子が香穂に

「ぜひ渡を紹介して。」

と言っていました。まーこの子がとびきり綺麗。

もちろん渡が寄ってきました。

「渡ね。私の名前は、○○。劇は楽しかった?」

"Yes!"

「キャラクターでは誰が好きだった?」

"Hello Dolly!"

と会話し、握手して別れました。

香穂に

「じゃ、まだ仕事残ってるから、帰ってねー。」

「じゃねー」

と言い渡を見ると、顔を真っ赤にして耳まで赤くなってる渡は

「帰らない。待ってる・・。」

誰を待つんだか・・。一目惚れです。

「駄目だよ!帰るからね!!!」

と引っ張って帰ってきました。

よく頑張って、しっかり楽しんだ劇でした。

帰って来てからもずーっとHallo Dollyの曲を聞いている渡です。

久しぶりに香穂に会えてよかったね!わざわざ行ったかいがありました。