自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

娘の大学です。自閉症の高校生との絵画授業

娘の大学に行ってきました。580kmを走り、きのうの金曜日に大学入り。

早くついたので、土曜日に見に行く劇を金曜日の夜も見ようかと。

実は娘が「当日券は多分、売り切れる。」というので、先に買っておいてくれて、もしまにあわなければ、2時間前までに電話するから当日券を待ってる人に譲ってほしいと話しました。この劇の話は明日書きます。

さて、きのうはほとんど会えず。今日は日中会って、今月末で大学を終える娘の荷物の一部を前もって運び出し渡と一緒にご飯でも食べようという話でした。

ところが、朝から舞台、昼間は、在校生と新1年生に送るためにビデオ撮影の為にこれまた会える時間か数十分と短くなりました。今年はレミゼラブルの興行権を取った大学なので、レミゼラブルのパロディ編で生徒達にメッセージを作ったみたいです。

けど、渡は数十分でも香穂にあえて、もう落ち着きまくり。すごく嬉しそうです。

その間に見せてもらったのが自閉症の高校生との絵画の授業。こちらのことです(クリックで過去のブログに飛びます。)→娘の絵の授業

これは、香穂の大学のアート学部の子達が、近くの自閉症の専門のクラスにいき、絵画を教えるという9回シリーズのものです。最初の2時間は障害の勉強。次の1時間は交流し、各自の担当の子供の発表。さらに授業計画をねり(←ほとんどビジネスプラン)6時間の授業を開始したそうです。

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交流絵画のクラスに出た子たち(撮影側に回っている子もいる)

香穂たちの下準備。

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さて、気になる香穂の担当ですが、最初の1時間目は、自傷がすごい子とペアだったそうだけど、急に大勢の生徒がきたので、大パニックに。別室送りになったそう。香穂は

「私が別室行ってやってもいいですよー」と言ったそうですが、部屋を汚すといけないから。ということで、断られたそう。どうも学校側としては、香穂に他害を加えてはいけないとおもったそうだ。けど香穂にとっては慣れてるから別にーだったようです。なぜなら、

いや、たぶん、一番大変そうな生徒だろうなってわかってたからさー。だってうちの大学の生徒は、自閉症をみたことない子達ばっかりなんだもん。さらに、自閉症の教室に9人も大学生が一気に入ったらそりゃパニックにもなるわな。

というのが彼女の意見、結局、次に行動が大変な子とペアになったらしい。この子は口頭言語がまるでできないそうだ。丸ばっかりかく子だけど、丸が好きとわかった香穂は、丸を利用。さらに、白い紙の全体をみせると描きにくい事もすぐにつかみました。なので、キャンバスに丸い白い紙皿をはり、すこしづつの描く場所をみせて、そこから丸を書きながら仕上げていくという手法をとったらしい。

けど、やはりそれでも自閉症の彼女自身の思う通りにいかず。パニックを起こして香穂を噛みそうになったそうだ。香穂は別に驚く事もなく、淡々と

あのね、人を噛むというのは、非常にいけない事で、やってはいけないのだよ。そういうことをするとあなたのパニックも止まりにくくなるし、噛まれた人もあなたの事が怖くなる。私も今は非常にここちよくないので、あなたのパニックが収まるまで絵は描きません。わかった?

と聞くと彼女が

わかった。

といったそう。先生達はむちゃくちゃびっくりしたそうだ。

まずやめるというのも驚きだったし、彼女が答えたのも驚きだったそうだ。

香穂は、

自閉症であってもなくても、良くない事はよくないし、きちんと説明すべきだもの。

彼女は香穂の片付ける姿をみて、ちょっとパニックになったけど、淡々と香穂は片付け始めたらしい。

他の大学生には香穂が冷たいとみえたそうだけど、香穂は、

だって友達だし、私も相手も人間なんだからいけないことをしたら伝えるのは普通のことじゃないの?

いやーすげー。

けどそこから彼女は、学んだみたいで、次からまったくパニックを起こさなくなり、絵をかきあげた。

たぶん、香穂を認めて香穂に甘えたんだね。だから噛むという行為がでたのかもねー。と言ってました。

一つ目の作品はこれ。

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2つめはこれ。

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私が小さいときに渡が、絵をいっぱいもって帰ってくるのをみて、

「こんなの全部、先生がかいたんじゃん。渡がターキーの顔なんて書かないし。」

って笑ってたのを思い出したみたいで、香穂は心に決めていた事があります。それは、

「絵に絶対に触れない。すべて彼女に描いてもらう。」ということだったらしい。作ってる過程がこれ。

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けど、筆もきちんともてないのに、どうやったの?といったら、上記の方法で、大好きなマルをいっぱいかいてもらって、プラステックのもの(たぶん、花壇におく花の名札みたいなもの)で絵の具を削る手法をつかったみたいだ。指でここはぁ?と話し合いながら作ったそうだ。他の自閉症の子は、大学生が描いたりして助けてたけど、香穂の担当の子は、すべて自分で作成したそう。

さて、これらの9時間のビジネスプランのような計画をたて、ゴール設定もし、レポートも提出した怒濤の授業がおわり、作品はすべて大学の図書館に運び込まれて展示会です。

今度は大学生達が自閉症の本人とご家族を大学に招待です。

目が見えない高機能の自閉症の生徒のお母さんは、もうずっと泣いていたそう。目が見えないから絵は無理だと思われていたみたいです。最初は、その子の担当の大学生が香穂に「どうしよう」と泣きついたようで、香穂がいろいろアイデアをだして、感触で解る突起があるようなものを使って、絵の上にはりつけていくようにしたみたいだ。

みんなは9時間の授業を終えて、レポート以外に感想を書いたそうだけどそれが貼られている。「神様に近づいた気がする」とか、そういう事が書かれてて貼られてる。けど、香穂の感想がなんだか短い。

えっ?と思ったら。

だって私にとっては日常だし。わざわざそんなことの感想をだらだら書かないじゃん。友達と一緒に勉強して、そのことをだらだら書いて壁にはりつけるのもなんだか変じゃない?

と。まー自閉症と長くいれば、そうなるかなーと思った。


香穂の嬉しかった事はいっぱいあったけど、一番すごかった事は、この香穂が担当した子。人と手をつながないし、気にいった人にしかYesとNoしか言わないのに、大学に着くなり香穂を見つけて、1時間香穂の手をにぎりしめて、ただひたすら、ひたすら一緒に歩きまくったそうだ。

香穂は、それはやっぱりうれしいよね。ほんと、嬉しい。

と言っていた。よかったねー。

さて、明日は、劇のことをあげます。まぁぁ、すごい劇でした。