自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

世界最大規模の本屋が開発したアンドロイドタブレットNookが残念なわけ

私はNookが好きです。これは世界最大規模の本屋Barnes & Noble (以下 B&N)バーンズアンドノベルズ が開発したアンドロイドタブレットです。なので、コミュニケーションアプリのVoice4uもこのNookに入れています。Voice4uの事は詳しくはこちらをクリック→続きを読む

Voice4u はこんな感じで使えます。

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::好きなところ::

とにかくハードがしっかりしていて、おしゃれで使いやすい。手触りもいいし。軽いし薄いしおしゃれです。さらに女性である私がこんなタブレットが好きだと思う理由は「アクセサリーがかわいい」です。カバーも洗礼されたものがあり, New Yorkerのカバーもあります。子ども用カバーもありますが、これがまた子どもしか使えないものじゃなく、大人の女性が持ってもおかしくないようなすっきりしたデザインです。コーナーに三角のかっこいい穴が空いているので、携帯ストラップのようなものもつけれるし。

けど、アプリ開発側からすると最初のNOOK (NOOK Color, NOOK Tablet)は、(1)SQLiteデータベースや(2)SDカードのファイルパスが基本的なアンドロイドの端末と異なり、NOOK用に調整しないとちゃんと動作しなかった。これらはさほど大した手間ではありませんでしたが、無駄にAndroid OSをカスタマイズして互換性の問題が起こるのはNOOKに限らず、他の端末ではもっと酷い事例もありました。ところが、2012年末に発売された、NOOK HDからは、普通のアンドロイド端末用に開発したアプリが無調整で動くようになりました。(本来こうでないと)NOOK HDはカメラが背面についていれば最高ですね。録音の音質も、Kindle FireNexusに比べて上質です。

::なぜ売れない?::

さてこのNOOKどうしてこんなに売れないのでしょうか?

単純にVoice4uの売上げベースで比較すると、

iOS > Android Market > Amazon App Store > NOOK App Store> その他

の順で、10倍づつくらい違います。つまり、NOOKとiOSは1000倍程度の差があります。

先日、B&Nは、現在ある687店舗を10年かけて30%減らすと発表しました。BORDERSという書籍チェーン店が電子書籍に参入せず倒産したのは、まだ記憶に新しいところです。B&Nは、NOOK部門をシリコンバレーを拠点に開発を進めました。

実は、息子がB&Nの店舗が大好きで我が家の近くには3店舗あるので、よく行きます。私は、息子が本を見ている間、NOOKの陳列を見ているわけですが、明らかにこれが失敗。陳列をみているとNOOKが発売された最初の数週間は、NOOKから派遣されたと思われる人がすっとんできました。ゆっくり触れない。それで立て板に水のごとく、おぼえさせられたと思われる台詞を言い続けます。

アプリを開発している私は、「アプリはいくつあるのか?」とか、「どういうアプリが売れてるの?」などなど質問するのですが、ほとんどの店舗でまったく聞く耳持たず。自分はトレーニングで教えられた台詞を述べて、彼女達のゴールである「予約用紙に名前を記入してもらう」というのをすすめます。係員の中には、アプリをダウンロードできる、というタブレットの基本を知らないケースもあり。

NOOKの近くにいくとすぐに人がすっとんできて、しゃべりまくるわけですから、まったく自分のしたいことはNOOKでできません。私だけがこういう目にあうのかな?と思い、ちょっと離れたところでNOOKを触る人をみてても、おばちゃんがすぐに飛んできて滔々とおぼえた台詞を言うので、みんなすぐに立ち去ります。あぁぁ…。こういうタブレットはしばらくは触らせておいて、そろそろ質問かなーと思う事に声をかけるのが基本。こういうタブレットは、ある程度買おうと思っている側が、なにをしたいか?が決まっていると思います。なので、それを確認するためにさわりに店まできてるのに。と思いました。お客さんに触らせないで販売員に話し続けさせるのはどうでしょうか?

さらに、私は会社の前にあるB&Nで予約用紙に記帳しました。営業の人たちの目標である予約用紙に名前を記入するというものですね。私達が記入すると派遣販売員の方がにっこり笑われて、

「入荷したら、すぐに知らせるわー。待っていてねー。メールと電話の両方でね。」

とNOOKの発売日も知らなかった彼女。他の店にいってもついにNOOKの正式な発売日はわかりませんでした。

数日後、ネット上ですでにNOOKが発売されているのを知った。

近くの予約した店に買いに行くと、私がちがほしい機種は入荷されてないとのこと。予約したと伝えても、「ない物はない」と。

いったい何の予約だったのだろう???

(結局その会社オフィス前にあるB&N店舗はその翌月に閉店になりました。。。)

しょうがないので、車を飛ばして別の店までいく。NOOKのブースの担当者は、ゲームに夢中....。「すみません」とい言っても「ちょっとまって」とゲームが終わるまで話を聞こうとしない。しかたなく、他の店員さんに「NOOKを買いたいのだけど、誰に聞けばいいかしら?」と尋ねると、「OOOに聞いてください」と。「だけど、彼女はゲームしてて、私達を無視している」とチクったら、係の人が彼女に店内電話で連絡をとり、係の人は渋々ゲームを止めて購入手続きをすることにしてくれた。あきらかに不愉快そうな彼女からNOOKを売っていただいたのでした…。Apple Storeではありえなわなぁ。と思う私。

個人的に、Apple製品を買うときは、オンラインよりもできるだけリアルの店舗に足を運ぶ。得られる商品と価格は全く同じでも、オンラインショップよりも、リアルショップは買い物をして非常に気持ちがいい。いってみれば”Buying Experience”が最高です。アップに対してよく世間でいわれている宗教的な感覚かもしれないけど、アップル製品にはおもてなしの精神が感じられる。だが、アンドロイド系で、それを提供できるブランドはあるだろうか? アンドロイド端末を買おうと思えば、Fry’s, Best Buyなどの量販店、またはオンラインで購入するのだが、アップルストアに勝る”Buying Experience”を提供できる機会はないだろうな。。。NOOK HDを購入したときは、”Worst Buying Experience”。

さらに、女性の多くがタブレットは買うものではなく、旦那は、彼氏や親族などからプレゼントで頂くもの、と思っている人も多いという事も言われています。なのに、B&Nときたら、毎度、毎度メールで、

「今ならNOOK HDを買うと50ドルのB&Nのギフトカードが付いてくるよ!安いよ!」

みたいなメールがしつこいくらい送られます。女性がティファニーの宝石がいいなぁと思う理由の一つは、「ティファニーが安くならない事」もあるんですよね。安いよぉーと言われているものをプレゼントに頂いても、やっぱりちょっと嬉しさが半減するのは事実。このあたりの戦法もまちがった気がします。プレゼントを頂く時に「これねー、安かったんだよ。君にあげるよ」と言われたら、誰だってあまりいい気持ちはしない。

ネットでの評判をみていてもNOOKは決して悪くなく。私達が会社でみんなで触ってもいいんです。NOOKはあきらかにマーケティングミス。営業ミス。対応ミスです。あと、どうしてもコンテンツも...。

物はいいのに、残念。本当に残念なNOOKでした。