自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

自閉症に投げつけられた言葉の処理。ジムは何をするところか?を明確にしよう。

ちょっとこのことは、ブログにあげておいた方がいいかなと思い、このブログにあげておきます。

香穂(渡の姉)と渡は、2人でジムによく行きます。お姉ちゃんが運転して連れて行ってくれるわけですね。渡はこの時間が大好きです。

渡は週に1回ジムのトレーナーについて、筋トレのメニューを組んでもらっております。このトレーナーの方が、本当に渡をよく見てくださって、ほめて伸ばしてくださっております。渡が大好きなトレーナーになっております。渡はジムに通って、このトレーナーの方のようになるというのが目標です。憧れの人なわけです。

なので、トレーナーと会うことがない日でも、ほぼ毎日お姉ちゃんと一緒にジムに通ってせっせと運動しております。その成果があり、渡の肩幅は今は、すごく筋肉隆々で、最近は、重いものは全て軽々持ってくれるようになって、買い物に行っても旅行に行っても荷物持ちを手伝ってくれて、家族みんなで幸せに過ごしております。

 

そんなある日、渡はいつものようにジムにお姉ちゃんと行っていた時のことです。

突然40歳くらいのおじさんが、渡に向かって大きな声で怒鳴り始めました。

「ジムという公共の場所で、自分のポケットに手を入れて、自分の股間を触るな!汚い。俺はこいつのことを数日前から見てたけど、前も触っていた。汚いんだ!」と突然怒鳴られたそうだ。お姉ちゃんは、すぐに

「あっ、ちょっと変わった人だ」と思って、渡に耳元で、

「渡、すぐに男子トイレに行きなさい!そこで私が電話するまで中で待ってて」と指示。怒鳴られた渡は心当たりがなく、何がいけないのかわからないので、お姉ちゃんの指示通り、すぐに一人でトイレに向かったそう。

香穂が止まらないおじさんの怒鳴り声を聞く係になり、聞いていると

「こいつは、前もTシャツをめくってズボンのポケットに手を入れていた。俺は障害のある親戚がいて、よく知っている。こいつはポケットに手を入れて、人前で自分のものを触るんだ。それで他の人が触った器具を触るのは汚いから、すぐにやめさせろ。」ということらしい。香穂は

「あぁ。これって、変な人だ」と確信し、そのまま

「わかりました。帰ります」と言って、とにかく怖がっている渡をいつまでもトイレに入れておくこともできないので、慌てて携帯で連絡して男子トイレから出して、連れて帰ってきたそう。

香穂曰く、

「渡が公共の場でそんなことをするのは、見たことがない。ただ、渡は最近肩幅がついてきたので、LサイズのTシャツしか入らない&身長が低いので、Tシャツの裾が長い。すると普通にポケットに手を入れると服をめくりあげて、Tシャツを捲り上げたように見えるのかも」ということになった。

実はこの自分の大事なものを公共の場で触る件のことは、私が小さい時に、成人自閉症のお母さんたちやセラピストや渡に携わるみんなから言われておりました。

「まず小さい時から教えることは、男の子なんだから、やはり自分のものが邪魔になって触ることがある。女性がブラジャーがずれた時に正しく治すのとおなじだ。けど、それは公共の場所ではやってはいけないので、絶対に公共の場所で自分の大事なものを触るのはやめさせないといけない。これは小さい時から訓練しておくことの一つ」と言われていたので、それこそ小さい時から訓練しているので、大人になってから、公共の場で触ることはない。おかしい。なぜ慣れている毎日行く場所で、そのおじさんがきた時だけ触るのか?

毎日連れて行っている香穂が見た現状は、ポケットに手を入れているのは、今は冬だし寒いから、よくあるけど、(手がかじかむと、バーベル持ち上げられないしね。多くの人は温めるためにはポケットに手を入れるよね。)自分のものを触っているのは見たことがない。私もバーベル持ち上げる前にポケットに手を入れしなぁ。それなのに、なぜ、あのおじさんは渡が彼の大事なものを触っていると断定できたんだろう?

ということに論点が移りました。渡に聞いてみたけど、

「それはGymとかパブリックの場ではやってはいけないんだよ。お風呂か部屋だ」という。

わかってるじゃん。

お姉ちゃんのジャッジは、

「渡は、寒いので、確かにポケットに手は入れたと思うけど(私もジムが寒い時はバーベル落としたくないから入れるし)自分のものは触ってないと思う。かれこれ半年以上毎日のように一緒にジムに行って、ずーっと見てるけど私は渡が触っているのを一度も見たことないのに、その日だけ、そのおじさんが見ている時だけ触るってありえるかな?私はないと思うな」

私のジャッジは、

「私もそこはすごく厳しく躾けてきたし、本人がやってはいけないとわかっているのに、その時だけやるかな?尚且つお姉ちゃんがいる前で。お姉ちゃんに嫌われるのが世界一嫌な渡が嫌われるとわかっていることをわざわざやるかな?100歩譲って、もしやっていたとしたら、おじさんに怒鳴られたら、渡はオドオドしながら必死で謝ると思うよ。ぽかーーんとして、あとはただ、怯えてたんでしょう?それはおかしいわ。心当たりがないからポカーンとして怯えてるんだ」

ということになった。

渡は

「僕はもうジムに行ってはいけないの?おじさんが怒鳴るから?」と泣きそうな顔をしているので、こりゃー何もやってない。ということになった。「僕が悪いから」という言葉が出てこない。「おじさんが怒鳴る」しか出てこない。正直で嘘つけない自閉症の渡は、もし触っていたら、「ごめんなさい」を何度も何度も言うだろうし。何がいけないのかわからない。というのは、もう大人なので、この程度の簡単な善悪は、口を酸っぱくして母が言っているのでわかるし。20年以上「公共場では、触ってはいけない」というルールを守っているので、わかるわけだ。

 

とりあえず。次は、私たちがすべきことをしようとなり、まずは、ジムへ相談。

ちょうど弥のトレーニングの時間も重なったので、トレーナーにまずは相談。トレーナーも

「いやー、その怒鳴った人、僕、誰だかわかるかも」と言い出した。それで

「渡はジムを嫌がっている?もう来るの嫌だと言っている?」と聞かれました。香穂は

「それはないです。ただ、おじさんは怒鳴るか?と聞いています」と答えていました。

「そりゃそうだろうなぁ。僕、今、渡が横で聞いて僕のことを見ているから笑顔で話しているけど、はらわた煮えくりかえって、怒ってるから。僕も渡がそういうことをしたとは思えない。確かにいろんな人がいるから、他の人で服の上から触ってしまったりする人がいるのは事実だ。けどね、他人を突然怒鳴るような人は、ジムはどういうところか?を理解していないんだよ。ジムっていうのは自分が弱い部分を強くする場所だ。人間は誰でも弱いところがあるんだ。精神でも肉体でも。それを強く少しづつ鍛えていくのがジム。そのような場所だ。なので、誰にでも聞こえるような大きな声で、人を罵って恥をかかせる場所ではない。僕は、その人がどの人だかわかるから今度、僕が彼と話すわ。あっ、その時に聞いておくね。<あなたは、できないことを大声でみんなにわかるように指摘してもらうのが好き?好きだったら、今度から僕も君ができないことを大声でみんなに聞こえるように、言うね>って言って、大声で、できてないことを罵倒してあげるから。香穂、心配しないで、ジムに来て楽しんでね」と言って香穂の溜飲を下げてくくれたそう。

トレーナーの人は

「確かに、ジムは弱っているところを強くする場所なので、色々な人がいる。僕のクライアントでは確かに触る子もいる。けどね。それはみんなの前で大声で言うことではなく、絶対にその人を傷つけないように、ちょっと廊下に出て、小さい声で指摘すればいいし、ましてやお姉ちゃんがいるんだし、他にも女性もいるんだから、他の人も思いやるべき。何か気がついたようなことがあれば、本当に小さい声で本人にだけ聞こえるように伝えればいい話だ。そのことをしっかり伝えておく」と言ってくださいました。

ジムは弱いところを強くする場所。みんな弱いところがあるから、頑張って通っているのだから、みんなで他の人を思いやりながら優しくすべき場所。と言うのがすごく気に入った私。私も弱いお腹周りを鍛えにいかねば!と思った、ほっこりしたジムの人の言葉でした。