自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

渡、歯の手術をする

渡の親知らずを4本抜く手術の日です。渡の親知らずは、90度に生えていて、隣の歯たちをなぎ倒しかけています。

親知らずが、横に生えてるので、上にでてくることはなく歯茎の下にあるので、切開して歯を抜くという渡にしては大手術。さらに多くの薬にアレルギーがあるため、ショック症状を起こさない様に明日は私にも多くの確認作業があります。親の私も結構緊張の手術。

さて、前の日の夕方から、ご機嫌が悪くなって来た渡。

「明日は歯医者だ」と自分で言っております。手術であることは理解している模様。

これは説明しないと今夜は眠りそうにありません。

余裕がなくなると言葉での理解は難しいので、なぜ歯を抜くのか?をVoice4uで説明。さらにVoic4uで明日のスケジュールを作成しました。

Voice4uでのスケジュールの作り方はこちらにあります


説明するともう二度と明日は歯医者だと言わなくなりました。納得していないと何度も何度も繰り返し同じことを言う渡。ここはどうも納得したようでした。


さて、今朝。

「歯医者に行くよー。」

と言うとすんなり車に乗り込みました。

歯医者に着くと私は、アレルギーのある薬などを看護婦さんと再確認。書類を記入したりして、あとは名前を呼ばれるのを待つばかり。

その間も渡は、今日の手術のスケジュールを再度Voice4uでこのように確認しております。iPadなので見やすいようです。

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なので待合室でも驚くほど静か。丁度他にもう一名、すごく歯が痛くて、調子が悪そうな方がいたので、渡が静かにしてもらえる事は、母としても大変助かりました。


さて、看護婦さんが出て来て、渡の名前を呼びました。ところがこの看護婦さん、シャキシャキしすぎている。背が小さく全身がもうドッチボールのように跳ねそうなくらい元気で、

「さぁーーーー切るわよ!!抜くわよ!!」

みたいな、気合いが見えます。あぁぁ・・。渡はこの雰囲気の人が苦手です。母に似ているから??かもしれませんが。困ったなと見たとたんにおもった私。

ところが渡は、

"Yes!"

と返事をし、私に

"Mom,See you later."(ママ、後で会おうね)

えっーいいの?本当に私が帰っちゃっていいの??

看護婦さんも渡の自立の感情を理解したらしく、

「じゃ、ママには、渡が手術が終わるまで外で待ってもらいましょう。それでいいかしら?」

と渡に聞いています。渡は

"Yes!"

ということで私は歯医者の外に追いやられました。なにかあったら携帯に電話してくれるように看護婦さんに頼み、看護婦さんは

「もちろんよ!」

と言いながら渡と2人で手術へと消えて行きました。


なんだか、不安な私。けど、しょーがないので、近くのカフェで落ち着かないまま連絡を待っておりました。

1時間ほどで

「終わったわよー!!」

と電話があり。あわててお迎えに。全身麻酔をうけた渡はふらふらとしています。意識がもうろうとしている感じです。

術後の注意点などを説明してくだった看護婦さんは、渡好みの白人の方で、すごく優しくのんびりしておりました。

渡はなんだか落ち着いて、彼女に話しかけています。えっーなんだかすごい。

看護婦さんが手術中のことをいろいろ話してくださいました。

この歯医者では自閉症の親知らずを抜く手術も数多く行い、結構苦労もあるそうです。彼らは、カンがいいために歯医者に入るなりパニックを起こす人や全身麻酔の注射針をみるなり大パニックを起こし、押さえて注射をしたりすることもあるそう。私はこれを恐れておりました。押さえて注射することはできますが、自閉症の渡はその恐怖を一生忘れる事は無いでしょう。


看護婦さんが驚いたのは渡の行動だそうです。別の看護婦さんについてきた渡は、この優しい看護婦さんの指示の通りにしっかりと動き、パニックを起こすどころか、どの患者よりも的確に指示に従い100%協力体制で、なんと全身麻酔の注射は自分から腕をだし、冷静に注射を受けたそう。

看護婦さん曰く、

「すべての患者さんが渡のようだと私たちもすごくいいのだけど。彼がすごい所は、今日何をするのか?を全て理解していたこと。なぜかしら?」と言うのでVoice4uの説明をしました。看護婦さん、大興奮!!

「これは全ての患者さんに必要かも。これはいいわー。少なくても自閉症の子どもの場合はぜひ使ってもらいたい。それから来てくればいいのに。」

とのこと。今日ほどVoice4uを作ってよかったと思った日はありませんでした。

トイレからでてきてもふらふらで車椅子に乗せられ、再度先生からの説明を聞くために、病室にもどった私たち。

気を許している渡が看護婦さんにいったこと

"Mirror"

鏡だぁ?

そんなもん、あるわけないじゃん!と思う私。ところが看護婦さんは、待ってました!とばかりに、鏡を引き出しから出してきました。

えぇぇ??

と思う私。看護婦さん曰く

「手術後は、ほっぺたが腫れるでしょう?多くの高校生は自分がどう見えてるか?が気になるので、鏡を見せて。っていうのよ。特に女子高生はほとんど。なので、渡の行動は普通の高校生の行動よ」と言われました。びっくり!やっぱり高校生だったのねぇ。渡。

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必死で鏡を見る渡。

可笑しい。

そんなことを話していると歯医者さんがやってきました。この歯医者さん、自閉症になれているのか、多くの事は語らず、声も大きく、単語を切ってゆっくり話してくれるので、言語が一番遅れている渡とでも会話が成立するという不思議な先生です。無事に手術が終わった事を告げられて渡と握手をして無事に解放。看護婦さんが渡を車いす乗せたまま車まで運んでくれました。

さて、今日から柔らかいものしか食べれないよ。静かに数日、自宅で過ごそうね。

偉かったね、渡。よく頑張ったと私も思うよ。