自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

自閉症の子供が待たされるということ

自閉症の渡の薬の準備ができました!と携帯にメッセが入り、引き取りに行ってきました。明後日から寒さが厳しくなるので、切れた喘息の薬の引き取りです。。喘息対策の一貫ですね。

ただ、薬をもらうだけなのだけど、間違いを防ぐために、カウンターではいろいろな確認があります。名前を言って、誕生日を言って係の方がコンピューターで確認を行ってから、引き取る側はサインをし薬をもらう。新しい薬は説明が義務付けられています。処方箋を渡す時も誕生日や、保険の確認等々、多くの手続きがあります。

「名前をいい、誕生日をいい、サインをして薬をもらう。」ただこれだけなのだけど、シリコンバレーは、人種のるつぼ。係の人が聞いただけで名前を入力できるわけではなくて、スペルを言わないといけない人がたくさんいます。私も日本人の名前なので、すぐに相手がわかるわけではなくて、いつもスペルを言います。

そうなると、列ができるのは必至。なので、なるべく空いてる時間に行きます。ところが本日は年の瀬なので、明日から薬局も時短営業になるので、列ができているわけです。

このお店。

今日は、入った途端、自閉症の身長180cmのティーンエイジャーの男の子が店内を飛び跳ねていたので、

あぁ。息子と同じだなー。

と微笑ましく思っておりました。

薬局の方へ進むと列ができておりました。私でも

えっ、今日はすごく並ぶのね。年末で忙しいのになぁ。ちょっと嫌だな。

と思ったほど。私の前には、その飛び跳ねて居た自閉症のお母さんとその自閉症の妹が並んでおりました。自閉症の男の子の妹と見られる子供さんも障害がある模様。もちろん自閉症のティーンエイジャーの子供さんは並べなかったので、飛び跳ねて居たわけですね。耳が過敏だったり、列で並んでいる時に人の声がしたり、他人と距離がちかくなるのが耐えれなかったり、人それぞれいろいろな理由があって並べません。

けど、お母さんは、1人で2人の障がいのある子供を連れて、薬を引き取る列に並んで居たわけです。

お母さんは家族の誰かの薬を引き取りに来たわけですね。手には購入しようとしている女性用品が握り締められておりました。さっきから飛び跳ねていたティンーエージャーの男の子が、ついに待ちきれずに大声をあげて自分を叩き始めました。男の子なので、叫び声も店内に響き渡るすごく大きな声です。

もちろん私は知っているので、

あぁ。お母さん。八甲田山の雪山登山で道を見失ったような大変な精神状態だわ。私も同じ思いを何年もした。たがが薬を引き取るということが、自閉症の子供がいるというだけで、どれだけ大変なことか...。

お母さんの気持ちが、もうすごく解りました。私は、走っていってすぐに息子さんを薬を引き取れるまで見てあげようかなとおもったくらいです。けど、これも、自閉症の子供にとっては、あらたな驚くことです。どうしようかな?と思いました。

私の住む地域では、自閉症の人も結構いるので、こういう場合は、周りは誰も何もいわないので、周りの人たちは、なにもなかったようにほおっておいてくれます。それでもお母さんは辛いだろうなと。

お母さんはすぐに薬の引き取りを諦めて、手に握りしめていた女性用品も諦めて、あわてて逃げるように出口へと向かって行きました。結局、あっという間にお店の中から、その叫び声は遠ざかり消えて行ってしまった....。私は

明日は、大晦日。明後日は元旦。薬局は、早く閉まってしまうし、あの家族が必要として居た薬は、一体誰がひきとれるのだろう。

お母さんが手に握りしめた女性用品。今日、すぐに必要だったのじゃないだろうか?一緒に並んでいた自閉症の妹が必要だったんじゃないだろうか?いまから子供2人を家に連れて帰ったところで、あの薬はもらえない。女性用品もすぐに使いたかったに違いないのに、使えない。どうするのだろう....。

だいたい、自閉症の子供を待つことが予想される薬を引き取るという列に連れてくるということは、緊急なのでしょう。自分の自閉症の子供が待てないことはその母親が一番知っています。

とても気の毒に思ってしまったので、私の顔に絶望というか、悲しさが出てしまって居た模様。すると突然後ろのおばあちゃんが小声で私に話しかけてきました。

大丈夫よ。あの叫んだ子供には障害があってね。なにもしないわ。私の孫は自閉症という障害があってね。同じなのよ。けど、なにも悪いことはしないのよ。ただ列が待てないだけ。

と説明して来ました。あまりに私の顔が悲しがっていたのでしょう。私も思わずおばあちゃんに私の思いのたけを伝えてしまった。

実は私の息子も自閉症で、もう22歳になります。数年前まで列に並ぶのも大変でしたし、今も薬の引き取りは、死活問題なので、いつもこの列が困って居ました。あのお母さんの気持ちが解ってしまって...。うちも息子の薬を取りに来たのだけど、私は息子がもう成長したので、家で待って居てくれるので薬を引き取れますが、あの家族はどうするのだろうと思うと胸が痛くて...。

と説明すると、おばあちゃんは、

あらまぁ、そうなの?そうよねぇ。自閉症の子供は、病気がする子供が多いし、音にも敏感。年末のこのワサワサした慌しい感じは苦手よね。本当、困るわよね、こういう時...。

とお互いに、何の解決もできなかったことを悲しく思いながら、各自自分の薬を引き取りお店を後にしました。

10月のハロウィーン、11月の感謝祭、12月のクリスマスと大晦日。1月の新年。慌しい行事が続く時は、自閉症の子供もまわりがわさわさするので、おちつかず、比較的いろいろな症状が出やすい季節です。年の瀬の悲しい光景ではあったけど、どうにかあの家族が薬を手にできて、必要なものが購入できることを祈るばかりです...。ネットや、携帯から薬の引き取の手続きが前よりは簡単に、できるようになったところで、貧困家庭では携帯だって、高くつくことが多々あります。とくに自閉症を持つ子供を抱える家族は、医療費だけでも非常に高くつきます。なんとか解決方法があればなーと思った今日でした。