自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

行方不明になる渡

大学が本格的に始まる前に障がい者を対象にしたオリエンテーションがありました。初日ですので、混乱を起こさないように、前日からお迎えに行く場所を決めて3回ほど担当の方と確認しました。アメリカ人が一番迷わないと思われる学校にあるアメリカ国旗の下での待ち合わせにしました。

さて、初日の朝。彼は初めてバスで一人で通う事になりました。助手の人と朝から打ち合わせし、おりるべき停留所に彼女が先回りして待ってくれているとの事。これは、いい!!小さい時に公共バスに乗れるようになるために、用事もないのに、夏休みはバスに乗りまくっていたので、おりるところさえわかれば、問題ない。中学は電車通学だったし。やっと報われる数年の練習です。

助手の人が先回りしている間、私と渡は、バス停でバスを待つ事に。バスがやってきた瞬間、なんだか、すごく嫌な予感がしたので、私のiphoneを渡に持たせました。バスの中でみたら、機関車トーマスのDVDは今度貰えない。という約束の元。

さて無事に一日が終わろうとしていて、私はお迎えの場所のアメリカ国旗の下へと。

ところがまてどくらせど渡がやって来ない。えっー!!行方不明じゃん。焦る私。iPhoneは渡に渡したので連絡が取れない。あっ、そうだ、そうだ。朝、こういうこともあろうかと思って渡したんだ!"Find iPhone”というアプリを使えば、今、渡がどこにいるのか(iPhoneのある場所)が解ります。iPadを取り出して検索すると、朝のバス停の方に向かっています。えっーありえん。

あわてて自分の車に乗り込み、渡を追いかけます。

ところがiphoneの場所はバス停から離れて行く。いったいどこに行くのか???

たどっていると、近くのショッピングモールで動きが止まった。ズームアップしていくと。。。

『いた!カフェスタイルのパン屋にいる!』

ありえない。なんでパン屋?助手と渡は現在迷子だろうに。


あわててパン屋にむかうとだいたいどの席にいるのか?も解ったので、すぐにそこへと。助手は自分たちが迷子になっているというのに、自分のご飯注文してるんですが。私をみつけて

「あらぁ。よくここがわかったわねぇ。」

自分が迷子になっているという認識ゼロ。

渡は待ち合わせ場所がわかっているので、必死で

「ママ、ごめん」

と謝っています。渡は、まちがいなく待ち合わせ場所を覚えていて、訴えていたことがこれで解ります。

私が

「今日の待ち合わせは、大学に掲揚してあるアメリカ国旗の下でしたよね?」

彼女の返事は

「あらぁ。だから、渡がずっと大学の名前を言っていたのね。なんて頭がいい子なのかしら、渡は!」

いや、それは、違うだろう....。誰でも3回も約束した場所はわすれないってば。ここはひとつ、反省しようよ。

助手に

「渡にiphoneを持たせてよかったわ。見つからなくなるところだった。」

と皮肉まじりにいったら

「えっ?それなに?」とFind iphoneを覗き込む。反省することもなく、

「すごいものがあるのねー。いいわねー。」と感動している。

なんだか、怒る気も失せた。

彼女からは、しきりに

「渡は頭がいい。」

っていわれたが、なんだかあまり嬉しくない。助手の人に助手をつけてあげたい。とおもったほど。

胃が痛くなったオリエンテーション初日でした。