自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

IEPが終わった

IEPが終わった。長い道のりでした・・。

今日は学区側の方からは、総勢10名以上の人が集まりました。

御偉いさんやら、先生やらそりゃ、見事なメンツがそろい、全員が座る席も無く、椅子を寄せ集めねばなりません。

なんせ、教室にいる子供の1.5倍以上の数ですから。

必要のない人が一人来てくださっていたので、(学区側が呼んでいた)すぐに全員のサインを集めて帰っていただきました。それでもまだ人数が多い。


今回は、とりあえず、自分の目標は、全て達成しました。

なにが大変だったか?というと、渡が進路を変えたために、取ることになった数学のクラス。

半年以上前から、数えられないくらいのクラスを見学し、やっと見つけた渡の数学のクラスです。サイズが小さく、ちょっと数学が苦手な健常児と学びます。

同級生や上級生にまざって取るクラスです。

ずっとスペシャルだった渡は、高校に入って、初めて健常児と一緒に数学を学ぶことになった。小学校の時にも数学・英語は取っていましたが、この時は、もちろん100%のサポートが付いていて、一緒にクラスに行ってくれる先生がいて、予習復習全て支援学級(スペシャルクラス)で、行ってくれていました。

中学校では皆無。

ところが今年に入って、私の知り合いに数学を教えてもらうようになり、4ヶ月ほどで、2学年分の数学を習得してしまいました。

さて、大変なのがここから。アメリカもこういうところは結構古い部分があって、「前例のないことは信じてくれない」のです。

「渡は急に数学が伸びたので、健常児のクラスにいれてください。」

だけでは、聞いてくれません。知的障害にそういうことはおこらないと思って、誰も信じてくれないのです。だって、親の私でも教えてくれてる知り合いに

「えっ?本当?渡、数学の計算は、高校レベルで、できるの?」

と何度も聞きました。親の私も最初は訳がわからなかった・・。

これをどうやって説明し、チームを納得させるか?です。ところが、渡に数学を教えてくれていた知り合いが、

「できているものは、できているのです。真実は一つです。渡君の強みは、公文で同じところをしつこいくらい何度もやっているために、揺るがぬ基礎があるところです。文章題は確かに苦手ですが、文章題は健常児も苦手な子供が多い部分です。計算力があるので、学力が落ちこぼれることはまずありませんので、問題は態度だけです。とにかく、どうにかして数学をしたい、と思っている渡君の夢を叶えてあげないと。」

そんなことから渡が数学がどこまでできるか?の証明が始まりました。いままでやったドリルをあつめ、公文を全て提出し、教えてもらっている先生には、どの部分がどのようにできるか?という証明の仕方まで教えてもらいました。

今回は、数学に行く時は、最初は助手の先生がいってくださったものの、しばらくしたら助手はいなくなり、渡は一人で通うようになりました。

今回のIEP前には、高校の数学の先生に何度かお会いしました。問題点があったら、チームみんなで解決してもらわねばなりませんので密な連絡を取っておきました。

初めて数学の先生にあう時には、もう膝が震えるくらい緊張しました。渡に数学を教えてくれた人は

「大丈夫です。行動面ではおしかりを受けることはあるかもしれませんが、このクラスのレベルでしたら、渡君は、落ちこぼれていることはないです。ゆみさんよりは計算は早くて正確です。大丈夫ですので、自信をもって先生と話してください。行動面はおしかりをしっかりうけて、なにを直せばいいのか?だけ教えてもらって、みんなで協力して直してゆきましょう。」

と、渡が毎日運んで帰ってくるノートを週に数回見てくださって言われてました。


それでも、いままで渡の知的障害/問題行動を知っている私としては、初回先生に会う時は、緊張しまくりです。

だってここは高校です。態度がわるければ、停学も、クラスを止めさせることもある訳で・・。ましてや同級生が授業をうけれなくなるような迷惑をかけていれば、それは駄目でしょう・・。成績はちょっと悪いでは止めさせられませんが、態度は決定打です。止めないと行けないことも覚悟の初回の面談でした。


震えながら数学のクラスに入ると先生が、私の緊張を察して、笑いながら

「あっ、天才のお母さんが来た。」(←そんな訳ないじゃん!)

とわざと笑わせてくれます。いい先生だ。やっぱいい先生だった。ともう嬉しくなりました。

先生は最初は、渡を見て

「あっ、また重度のクラスから、生徒がやって来た。できないんだよなこういう子。」と思ったそうです。

過去に渡のクラスから、何名か来たけど、やはりまったくできず帰って行ったそうで、渡もか・・。と思って、クラスに最初に渡される学力テストを見せたそうです。

渡は手をひらひらとさせて、紙には目もむけず、前後に揺れていたそうです。

「あぁ・・できないんだな。興味もないんだな。けど、できない証明を出さないことには、元のクラスに戻って何をするのか?を明確にできない」

と持っていた、その1枚の学力テストをやらしたそうです。

鉛筆を渡すと、ゆらゆらが止まり、目にも止まらぬ早さでテストが終わったそうで・・。

時間を計ったら、最短。満点だったそうです。先生は

「あっ。親が前やったものをどこかからもってきて、テストに備えて教えたんだな。じゃ、もう違うのを一枚やらせるか。」と、新しいのをやったら、それも新記録樹立の時間で、満点。先生は、びっくりして、結局5枚やらせてみたら、全部新記録樹立で出来て、最後のテストには、おわるとすぐに、先生に向って命令形で、

「100点って書け!」

って手渡したそうだ・・。私は聞いて、

「えっーなんて態度がでかい、渡・・。」と思ったけど、先生が100%と書くとにっこり笑って、満足そうだったと。

先生は、

「彼は現在クラスで成績はトップレベルです。だけど、安心しないでね。来週からグループワークが始まります。渡がお話ができないし、グループで行う数学になると崩れてくるとは思います。」

と宣言されました。



数日後、崩れているであろうグループワークを聞きに行くと

先生も考えてくださって、お話が上手なんだけど、数学の計算が苦手な子供さんとペアを組んでいました。彼は彼で、渡が話さないのがおもしろくない。けど、彼は渡に話しかけます。

(高校生風に→)「週末、なにしてたんだよっ!?」って聞かれても、わからない渡・・・。いままでは先生が丁寧に渡にわかるように、

「渡、週末は映画を観に行ったの?」

とか、ヒントを入れてしか聞かれてなかったので、答えられない。その子は無言の渡にちょっとむっとして

「なにもしてねーってことは、ねぇだろ?」

みたいに聞いたら、渡がぼそぼそと週末のことを話し始めたそうです。


先生には、助手が要りますか?と聞いたら

「やっと友達が出来たことだし、いま、大人が入ったらお友達が遠慮します。今のバディは、渡は計算ができるが、言葉が話せないことを認識しています。彼も渡から計算を引き出し、自分が渡の出来ないお話するという部分を補うということをしてるので、彼と楽しくやってもらいましょう。問題行動は一度の注意でやめなかったことはなく、しかも現在は減って来ているので、クラスのルールがわかりつつあるので、このままやりましょう。もし助けが必要になったら、必ず言いますから。」

とのことでした

ほっ。

ということでこの数学の先生のレポートをIEPで提出し、無事に数学クラスを受け続けることが決まりました。

渡自身は、毎日数学のある日は、10分も前から

「Math day!」

と言って、バスがくるのを寒い外で嬉しそうに待ちます。

いやー、ここまでの道のりは大変だったけど、よかったね。

けど、渡は数学のクラスに行く動機は不純かも・・。クラスにかわいい子がいたのを、ママは見逃してないよ!渡、なんとか、工夫してその子の隣に座ろうとしてたんだよねー。

青春してるじゃん!!(笑)これからが楽しみだね。