自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

香穂の大統領選挙ボランティア

香穂は、大統領選挙のボランティアにいってきました。数日前に説明をうけ、いろいろな仕事を説明してもらったそうですが、時間切れになったそうです。香穂は、

「えっ?ボランティアだけど、もしかしたら、すっごい仕事量なんじゃないの?」

と覚悟をして望んだそうです。

私が迎えにいけなかったので、友達の御母さんが、香穂を高校から、選挙会場まで運搬してくれました。

さて、香穂、会場へ。

私は、香穂が会場に入った後、1時間して、帰宅しましたが香穂から電話が・・。慌てた声で、

「ゆみちゃん、いまドラムの先生が投票に来てね。渡は今日来るか?って心配していた。私が行けないことは、よく説明しておいたので、ちゃんと行ってね」

と留守中の渡の心配でした。私が

「あなた、ボランティア中に電話してていいの?」

と聞くと

「そうだよ。今、30分休みを貰ったんだけど、大人も学生もみんな同じ仕事で大忙しなんだ。30分も休んだら、大変だよ。

学生2名大人3名ですっごい数の人を裁くんだもん。だからすぐに会場にもどる。じゃ!ドラムの練習忘れないようにね!」

と電話を切りました。


夜9時に香穂が終わるというので、随分前から、会場前で、香穂がもどるのを待ち・・。30分遅れで、香穂がでてきた。もう憔悴しきった顔です。

オバマが大統領になったのは、知ってる?」と聞くと

「知ってるよ。」という答え。

「2ケ国語話すと5ドルお金を多くもらえるって喜んでいたじゃない?役にたったの?」

と聞くと

「ゆみちゃん、ダメだよ。選挙のボランティアで2ケ国語程度話せても、助けにならない。6ケ国語話さないと」

といい始めました。


なにかというと、メキシコ人の人がきたそうで、彼は英語がかけらも話せないそうです。で、本人に住所を書かせるのだけど、彼は

「英語がわからないし、まったく書けない」

スペイン語で、言うので、香穂は、スペイン語を話す人を必死で探したけど、少ししか話せず、みんなすぐにあきらめて帰ってしまうそうです。その人は、だんだん悲しい顔になってきて、香穂も

「せっかくきたのに、この人の1票を無効にするわけにはいかない」とおもい。

「じゃ、ゆっくりいきましょう」とスペイン語で話したそうです。なんと!香穂は昔スペイン語の授業をとっていたのです!でも、この科目は、彼女が一番苦手としていました。

苦手なので、すっかり忘れたスペイン語を頭の中でたどりながら、

「私が、1.2.3とスペイン語でいうから、自分の住所のところで、止めてね」とスペイン語で言ったそうです。

アメリカの住所は、

1136 Deer Dr

というように、最初に数字がくるので、

数字もわからない!!とパニックになってる投票者をなだめながら、ウノ、ドス、テラ・・・・と言いながら、数字を書き、アルファベットも全部スペイン語に直して、時間をかけて、住所が出来あがったそうです。無事に本人確認ができました。

住所確認できれば、あとは、スペイン語の冊子がおいてあるので、それをわたして、彼は、選挙ができたそうです。彼は、すごく喜んでいたそうです。

「よかったよ、英語を上手く話せない人が、我が家には2人(私、渡)がいるので、忍耐だけは、私はあるし・・・。話せない人のパニックになる状態も渡でよく知ってたので、なんとなかなだめて、選挙してもらえた」

と思ったそうです。

これで困難を乗り越えたと思った香穂。いえいえ、甘い。

今度は、ロシア人登場です。ひとことも英語がわからないおばーちゃんに成人の娘さんがついて、一緒に投票です。


「あっよかった!今度は通訳がいるので、大丈夫。」と思ったが、甘かった!

通訳の人の英語がわからない。あとで、

「どんな英語だったの?」と聞いたら、

香穂いわく、

「ぶっとい英語」

と答えた・・。ぶっとい英語なんて意味がわからん・・・と思ったら、

「あのさ。英語で I have a pen.は アイ ハブ ア ペン。って切れるでしょう?ロシアの人のは、

アブアペンになるの。切れるところがない。その上、巻き舌が入るので、難しい。

何度も話してもらって、やっと理解。


はっ~!と肩の荷をおろしていると次に来たのは、中国人。

中国人は、用意周到だったらしく、自分の国の言葉で訳した選挙ガイドを持ってて、香穂に中国語で話していたそうだ。まったく英語ができない。

香穂はあせったみたいだけど、その中国語選挙ガイドの漢字の意味はわかるので、指さししながら、教えたそうだ。

日本人のような人はいたものの、質問は出なかったそうです。

香穂いわく

「日本人は、失敗したくないし、公の場で、質問する習慣があまりないので、前もって、選挙はどういうものか?と調べてたんじゃないかな?」

と推測していました。

8時に会場は、閉まったものの、投票用紙のカウントで数が合わず、数え直したので、9時半までかかったそうです。一つ一つの箱の5名のサインが入り、無事に終了。香穂いわく

「歴史に残る選挙だったかもしれないけど、私にとっては、言語とのつらい戦いの選挙だった。ご飯もでなかったし、お菓子だけでたので、それで食いつないだ。2時から、9時半まで、よく働いたわ。」

と言ました。

この言語との戦いの選挙は、人種の坩堝といわれれるカリフォルニアならではの戦いだと思います。いい体験したね。