渡が5歳のころの話です。
渡はわりと重い喘息があるので、私は彼の喘息発作がでると、シーツからブラッケット、カーテンetc・・・すべてのものを一気に洗濯します。ほこりを吸うと、喘息発作が出やすいからです。
一気に洗わないと、ほこりが右へ左へと移るので、発作が出たときは、渡を連れてコインランドリーへ向かい、洗濯機を何台も占領して、一気に洗濯です。
コインランドリーになれている彼は、お札をコインに換えるために両替機で、両替したり、色柄と白ものを分けてくれたりと、大活躍です。その日のコインランドリーには、スペイン語を母国語とする家族と、日本語を母国語とする私たち家族のみが洗濯をしていました。国際色豊かだなぁ・・と感心しながら洗濯をしていました。渡はくるくる回るものが大好きなので、乾燥機の中でくるくるまわる衣服をうっとりと見つめていました。渡がいい子でじっとしてる間に・・と私は、洗濯ものに柔軟剤をいれたりしていました。すると、突然、もう一家族のお母さんが、スペイン語訛りの英語で、乾燥機に向かって怒鳴っているのです。私は、
「機械に向かって、文句を言ってもなにもならないのに。たまにいるのよね。こういう人。やたら機械に文句をいう人。あっ!けど、私もたまにやるから、言えないわよねぇ」と微笑ましい光景だと眺めていました。そのお母さんは、ますます、怒っています。私はクスクス笑いそうになりました。
が、よくよく考えてみると、機械に文句をいうのなら、自分の母国語で言えば言い訳です。なのに、乾燥機に向かって英語で怒っているということは・・。えっ?えっ??渡は?渡はどこ?と、探したのですが、彼はいません。慌てて、そのお母さんのほうに行くと、なんと!渡が乾燥機の中にいるのです。彼は、回るものが好きなので、乾燥機の中でくるくると回る洗濯物がとてもうらやましかったようです。それで、自分で乾燥機の中に入って、そのおばさんに
“Go! Go!”(見ていないで、乾燥機をまわせ!の意味)
と命令しているのです。よく聞くと、そのお母さんは、
「アブナイからでなさい。」と渡に言っています。私は、渡を引きずり出し、彼女に
「注意をしてくれてありがとう。」とお礼をいうと、彼女は
「危ないわよ。乾燥機で遊ぶと。気持ちは、わかるのだけどねぇ・・。」と言ってくれました。
そのとき私が思ったことは、うちの近くにあるグレートアメリカ遊園地の回転ジェットコースターに渡をのせると、こんな楽しいものから、二度と降りないと言うのだろうな。今年は、私は、あそこへは行けないな。皆とは違う怖さでいけないな。と思ってしまいました