自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

渡のお年玉

渡は、私のお友達からお年玉をもらいました。金額は5ドル。友達は、渡のことをよく知っているので、1ドル札と、25セント硬貨のまざったお年玉です。というのも、渡のお金の認識は、25セントから始まりました。私の買い物についてくると、たいてい、25セントのコインさえ持っていれば、自販機のようなところから、ガムがかえたり、2枚か3枚いれればジュースが買えるからです。渡は、朝もらったこのお年玉で、夕方に買い物にいくのを楽しみにしていました

朝から、公文の宿題をし、おもちゃを片付けジャケットをきて、でかける準備万全です。私に夕方4時になったら、お店に行けるといわれていた渡は、3時半から、

「4時になったら、出かける」

と何度も私に聞きにきます。4時になったので、いざ出発。渡の目的は、近くのHobby shopというお店です。ここはマニアックなお店で、機関車トーマスの揃えも最高にいい。店につくなり、スキップして店内に入った渡は、店の一番高い位置に吊ってあるトーマスの友達のゴードンを取れという。

あぁ、渡がずーっと言っていたゴードンってこのことだったのね。

取る瞬間、私は戸惑った。だって、値段が・・。昨年から、この機関車のことを言い、狙っていた渡ですが、渡の身長から見えるこの機関車についてる値札の4は、十の位の4。けど、しょーがない。渡に手渡して、

「渡、これは、44ドルだから5ドルでは買えないよ。」

愕然とした渡。本当はここで叫びたい。泣きたい。怒りたい。

<なんで、十の位の数字しか僕に見えないんだよぉぉぉぉ~!4しか見えなかったから4ドルだと思ったよっ!!こんなの、ひどいよ。>

もう、そう叫んで泣きたい渡がわかる。目が泳いで、必死で涙と怒りをこらえています。けど、彼なりに、この問題に対処しようと思ったようで、

「ブリティッシュフードに行こう!」

という。

そうだね。渡。あのブリテッシュフード(近くにあるイギリスの商品をおいてるお店)は、4ドルと少しの値段で、トーマスがおいてあったね。近いし。行こう、行こう~!

ホビーショップを後にして、近くのブリテッシュフードへ。ここのおばちゃんは、渡と仲良しだし、新年のご挨拶もしようね!

渡は、入るなり、おばちゃんが、いるレジをちらっと見たけど、いない。倉庫に行ってるようだ。渡は走ってトーマスの売り場へ。ところが・・。なんと新年になり、しっかり1ドル近く値段が上がっている・・。渡、限界。叫ぶかと思い、私も覚悟をしたけど、他のビデオを見たりして、自分で気を紛らわせようとしてるのが、わかる。

お金を足してあげるのは簡単だけど、渡には、お金をためる、というのをそろそろ教えたい私。渡は、自ら進んで車にのって家に帰ろうと私に訴えた。家につくなり、自室の扉をピシャンとしめて、

「わっ~!」

と雄たけび。そりゃ、そうだ。2回も値段に裏切られたんだものね。けど、よく絶えたよ。渡。私だって、昨年から目指していたお目当てのものが、やっとお金が手にはいって、お店に行ってなかったらその場で絶対に

「えっ!ないよぉぉぉぉぉっ!」

ってブツブツ文句言ってると思う。その場で文句もいわず、ちゃんと自室まで耐えたあんたは、えらいよ。(我が家は、どうしても耐えられないときは、自室でなら叫んでいいことになっている。)でてきた渡は、目に涙をいっぱいにためて、それをぬぐいながら、私のところにやってきて、

「ごめんね。ママ」

と叫んだことを私に謝った。なんか、じんと来てしまった私。昨年から、楽しみにしていたのにね。

渡には、お手伝いをして、お金を少しづつためれば、お目当てのトーマスは買えることを説明しました。冷静になった渡は、早速、自分のお仕事のひとつである、ごみだしを開始しました。お金を透明のジプロックにいれて、数える渡。がんばった分、今日一日で、少し、金銭感覚はできたみたいだ。お金がたまったら、ブリテッシュフードのおばちゃんのところにも、あいさつにいこうね。