自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

ドキュメンタリー映画の舞台を見てくる

前にも記事にしましたが、「エリンブロコビッチ」という映画についてです。

この映画は、2000年の映画で丁度、渡が多動の症状真っ盛りの時期と重なります。内容は、無学な主人公(ジュリアロバーツ演じる、エリンブロコビッチ)が工業汚染された街の人たち600人以上をまとめて一丸となり戦う。という物語です。あまり書くとネタバレになりますので、書きません。

戦う相手はPG&Eという西海岸では一番大きな電気やガスの会社です。

この話は実話で、本当に Hinkleyという街にPG&Eの工場があり、そこではパイプラインでガスを送り、一旦圧縮します。その機械がさびないように6価クロムという有害物質を使っていました。

この映画を見た頃、私は渡の子育てが大変で、毎日へとへとに疲れておりました。これを見て思った事は

「悪いことは悪い。それはきちんと声を出して悪いことをしてる人に伝えねばいけない。」

という単純な事でした。けど、実際実行になると難しいことです。

例えば、渡に対して予算がないからと、約束した福祉のサービスをこっそりカットされてしまえば、私がきちんと意見を言わないと声なき渡は言う事ができません。

なので、私は「自分の意見」と「渡の意見」の2つを伝えないと行けない訳です。これがともすれば、「自分の意見だけ」になるのですがそれは駄目なのです。

「福祉のサービス」は渡が将来も生きていくために必要なもの。彼が精一杯やってそれでもできなかった分のサポートです。

私の意見は親に無言でカットすることはできないということ。渡の意見は、現在そのサービスがないと、自分が生きて行くのに非常に困るということなどです。

逆もまたしかりです。

社会のルールを守る事は、人間に生まれたら当然の事です。

自閉症であってもなくても人様を傷つけたりしたら注意せねばなりません。大きな声で突然、奇声を発すれば誰だって驚き耳も痛いです。

こういうことも私からも渡に理解できるように注意しますが、ご迷惑をおかけした方にもきちんと謝罪し、ずーずーしいのですが、協力をお願いしておりました。

「すみませんが、彼は言葉の理解が遅く多くの方に言われたほうが理解できます。直接言ってあげてもらえますか?」

母の注意はバックグランドミュージックになりつつあるような時でした。注意してくださった方も注意するのは嫌なことですが、

「ありがとうございます。」

というお礼も忘れてはなりません。これも渡が言えない分、私が伝えねばなりません。それでも手伝ってくださった方の多くは

「あら、お役にたてたのね。こちらこそありがとう。」などと言われます。


そんなことをこの映画から学び、自分が生きる元気をいただいた映画でした。

先日、娘が帰って来たので、前期はハリウッドの歴史を学んだので、映画の話になり彼女はいろいろなお勧めをおしえてくれましたが、私がすすめたのは、このエリンブロコビッチです。

英語の言葉が非常に汚いので、決してまねをすることはできませんが、(娘も眉をひそめるほどです)この心意気がいいと話していました。

実在するエリンブロコビッチさん当人のインタビューも何度も聞きましたが、彼女いわく

「この裁判の時、私は絶対にHinkleyの街の人を守ってみせる。私がなにを言われても彼らの苦労を思えばなんでもない。と思っていた。」というのが印象的なものでした。


さてこの映画の舞台の Hinkley(ヒンクリー)の街とPG&Eの工場は、ラスベガスに行く道の途中にあることが判明。

丁度、出張がラスべガスだったので、迷わず工場を見に行くことにしました。

我が家から、約600kmほど行ったところにあります。

到着した工場はここ。映画に出ていた工場ももちろんこれです。

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入り口の看板も映画に出ていた通りに

"PG&E Pipeline Operations Hinkley District"

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とあります。

もともと人口が少なく荒れ地のような街は、事件後、多くの家が裁判の賠償金で引っ越しているために廃屋が多いですね。

工場を見て思った事は

「本当にこんなに大きなところと戦っちゃったんだ。」

ということ。なんだか、力が湧いてきました。

自閉症のお母さんにはぜひぜひ見て頂きたい映画です。

元気がでますよ。

さて、ラスベガスに向けて走り出します。