自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

自閉症の渡と有理関数

さて香穂の誕生日は無事に終了。ほっとしている訳にもいかず。次なる課題は渡です。数学で苦手単元に入った渡。落ちる事もあると思っていたのですが、なんとこの単元の小テストの結果はこれでした。満点は10点です。

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びっくりしたのは、私のほう。なにかあったかもしれない。と逆に心配になる。そろそろ教授と話そうと思い。

そーいえば、面白い本をみつけて読み終えたので、数学の教授に渡そうと思った私。彼は好きそうだ。

その本は、これ。

F in Exams: The Best Test Paper Blunders

F in Exams: The Best Test Paper Blunders

試験でF (落第点)を取った解答。という本ですね。

どんなことがかいてあるか?といえば、例えば、

周波数の問題。

問題:人間が聞こえる一番高い音は?

答え:マライアキャリー。

機械構造学の問題。

問題:掃除機とは何か?

解答:お母さんがもっと使ったほうがいいと言っている物。

というのがあり。これは数学の教授が好きそうだと、思った。本をもって渡と教授とお話に行ってみた。


教授は私達が質問に来た事を非常に喜んでいただきました。

苦手な単元であったことなどは教授は、感じてなかったそうです。なんだかすごくがんばっていることを教えてくださった。

クラスに100点しか取らない中国人の子がいるのですが、その子は、グループでやる時などで計算があってるか?とか、わからなくなると渡の解答用紙を頼って確認しているとの事。なんだか、うれしいなぁ。知的障害のある渡のやった数学の答えを頼って頂いている訳で。人様の役にたっている感じがするなぁ。よかったねぇ、渡。

けど、クラスが始まる前は、渡は黒板(白版ですが)の前ではねたりしていることもあるそう。けど、みんな渡がちょっとかわってて、障害があることは解っているので、誰もあまり気にしてないそうです。

けど先生からは、質問がありました。


現在の単元は、ちょっと複雑な有理関数積分(integration of rational functions)をやっているそうだ。

これは日本では高校数学IIIで習い始める感じでしょうか。

やったね。これは、渡は大好き。

有理関数の積分などというものは私は記憶の遠く彼方ですが、どういうものか?というと、分母と分子にXの3乗や2乗みたいな、長い式が入っていて、それを因数分解して3つくらいの分数を掛け合わせるようなものです。

まー、とにかく私がやると「めんどくさぁぁぁ」と思うもの。

これは渡は開発リーダーと毎日公文のプリント60枚くらいやってましたので、とにかく早い。マッハのように早い。

渡は、サバンであるとか、天才とかではなく、ただただ普通に頭が良くない分、人様の10倍ほど公文をやっていただけです。

けど、教授がいうのには、この有理関数を解く時に、3つほどややこしい分数の掛け合わせなどがあっても渡は因数分解の途中式を書かず、数秒でダイレクトに答えをだしてしまうようです。最初は、てきとーにやってるのか?と思ったらしいのですが、解答が全部合うので、どうも違うと。

「どういうことだろう?」聞かれたので、

「どうもこうもないです。ただ、人様より多く公文のプリントをやっていて、現在公文ではその有理関数の部分は、大学数学でやっていることよりもまだ難し事をやってるので、できるんだと思う。」と説明しました。

先生もそうかぁ!と不思議な渡に納得。

その場で有理関数を数題、解かされました。たしかに早い。

数秒で解答をだしてしまう。

なので、因数分解の途中式を書くように指導してくださって、途中式がぬけると減点になるからね。

と教えてくださいました。驚く渡。微細運動が苦手で鉛筆持つのが苦手な渡は、なんでこんなめんどくさい途中式が知りたいんだ??と思っている模様。数学だから要るんだよ!!と、つっこみたい私。

教授は私達の訪問をすごく喜んでくださって、

「ゆみ、僕のオフィスアワーには、ちょくちょく来てね!!」と言ってくださいました。

戻ってから、開発リーダーに報告。

開発リーダーは、

「あぁ、そうですか。有理関数は、たしかに渡君は得意です。計算の早さはだいたい僕に追いついてきましたので、早いかもですね。けど、ちょっとさぼったりするところがあって、たまに間違いますよ。」

とのこと。

じゃ、ここまで計算できるから。日常生活に困らないか?というと。

そんな事はありません!!

全力で否定。

というのも、たとえば総合体育のクラス。

走って疲れた後に、おもりの入ったボールを持って、それを左右につくとか、持って走る、壁に投げて受けとることを100回するなどの運動があります。このボールは自分で好きな重さをを選びます。大きさが違います。たとえば、

5パウンド(約2.25kg)の青のボール

4パウンド(約1.8kg)の黄色のボール

3パウンド(約1.35kg)の緑のボール

2パウンド(約0.9kg)の茶色のボール

と4種類あります。へたれで、すぐにしんどいという渡は、2パウンドの茶色を選ぶべき、なのです。見た目にも小さいし、3歳児でもどれが軽いか?誰でも解ります。

ところが!!

彼は好きな色で選ぶので、青の5パウンドのボールを選びます。ここに100人がいて、渡の選ぶべきボールはどれかときいたら99人が茶色と言う事でしょう。それくらい体力ないし。

数学できるのに、こんな簡単な事がわからない。算数が解らない訳ですね。

こういうところ見てるとやっぱり、自閉症だなーと思います。しんどい事と、重いボールを持つとさらにしんどくなることが連結できないのでしょう。非常に不便な渡です。