自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

IEP(個別指導計画)で大事だったこと

息子のIEPがありました。

カリフォルニア州の教育費というのは、全米でも5本の指に入るくらいカットされ、 UCやSTATEの大学でも毎年のようにガンガン授業料は値上げ、先生の給料は下がるなどの事が起こっています。こういうことが行われると特別支援教育は、ハンパ無くカットされて行きます。けど、特別支援教育というものを提供する時に

「お金がないので、この教育はこの生徒には与えられない」

ということは決して言ってはいけないとされています。

IEPは、多くの専門家やそのほか親が許可した人なら誰でも出席できますので、今回は、うちの場合は総勢14名。今回は少ないな。という感じです。

今回の私のターゲットは英語と数学と体育のクラスのメインストリームと特別支援学級でのゴールを減らされないようにすることです。前回決まったゴールは全て必要な事だと皆で思っていたからです。


カリフォルニアの普通学級の教育は、○年生の時にはこれらをできるようにするという学校で行うべきゴールがきちんとあります。しかし、渡のような発達障害を持つ子どもたちはこのゴールの達成が難しいので、IEPで各自の発達にあったゴールを決めます。これがIEPですね。ここで決まったゴールは、法的な拘束力もありますので、専門家がさぼったりゴールを達成しようとしなかったりすると、異議申し立てをできる方法もありますし、法的に担当者を罰する事も可能です。

IEPでは、チャレンジなゴール(低いゴールにしない)にせねばならず、すでにできるようなことや簡単なゴール、計れないゴールなどは、使えない事になっています。詳しくはこのブログのカテゴリーの右側のところのIEPをクリックしていただければ、読めます。

さて、学区の予算の減らし方(笑)ですが、まずは各自のゴール数自体を減らす方向に持って行くようです。

そうすれば、年間に行う事が減るので、予算も削れると言う事のようです。

なので、渡の場合は、前のIEPでは16個のゴールに絞り込まれておりましたが、メインストリームするので学区としては、渡の特別支援学級でのゴールを半分にしたいといいだしました。学区側のいい分としては、

「メインストリームでも追いつけない体育などは、無理して入れてあげてるんだから。」というようなことをオブラートに包んで言われます。これは渡に変わって私が言わないといけません。

「けど、成績はAなんだよね。」

というと、みんなぶっ飛んでました。(笑)成績くらいは一通り目を通してから、

「できない」と言ってほしいと思う私。頭ごなしに渡はできないっていうのもねぇ・・。

メインストリームのクラスはカリフォルニアの指定のゴールで進むため、各教科ではそのゴールを目指す渡は、ゴールが増えるので、大変だと言う事が学区の言い分です。けど、前のIEPではすでに数学と体育のメインストリームは、決まっていた事ですので、減らせないというのが私の主張。

学区と郡の12人を相手に説得する訳ですので、「うちの子どもはこれをやりたがってる。」などという抽象的なことは説得するのには必要ですが、証拠としてはこれだけでは薄いですね。

私は

「IEPに、手ぶらで出ない。」

と決めているため、今回もデータをきちんと出す事にしておりました。これはどうやったか?というと数値を出しました。

まずは学校に出席する日数をわりだし、早く終わる日、時間割、作業療法の時間、スピーチの時間等を割り出します。そこに数学、体育、英語などの時間を入れる。

これらは会社の休み時間にやりました。私は一日ごとにエクセルに入力しようがんばっていたら、そこへニコニコと開発リーダーが声をかけて来た。

ゆみさん、何してるのですか?

どうもリーダーは、私が数字を触り始めると静かになるので気がつく様なすごい触覚が生えているようです。

毎日の渡の時間で数学や体育に何時間費やし、セラピーを何時間して・・っていう時間を割り出してるの。それでパーセンテージを出そうと思ってるんだ。けど、ややこしいので、一日づつの時間を入力してるんだ。

何日入力するんですか?

175日。それを毎日の分、書き込んでエクセルにするんだぁ~!日によっていろいろかわるからめんどくさいし。

あっけに取られるリーダー。

ゆみさん、時間割というのは、毎週の時間を割り振り、それを表に組んだものです。なので、そもそも規則性があるのです。規則性のあるものひとつひとつを入力するというのは無駄が多いですね。授業が短い日は何日か?OTやスピーチは何日か?

を入れれば、1年間の渡君がどこに何時間いるか?なんて簡単に割り出せますけど・・・・。

けど、それがとてもややこしい時間割だから、困ってるんだってばー。

早く終わったり、遅く始まったりして、メインストリームのクラスのスケジュールもめちゃくちゃだし・・。

リーダー、あきれ顔。だから、言ってるじゃん。と。その早く終わったり、遅く終わったりするのも、私が今持っている年始に学校から配られた紙に全て入っている訳で・・。それを入力するっていうことなんだよ!と言いいたそう。ついに、あきれたリーダーが

じゃ、僕できますよ。ゆみさんがやると間違うし、時間も無駄だし・・。

ということで、あっという間に毎日のクラスでの勉強時間、セラピー時間、数学、英語、体育の時間が表になりました。それがこれ。

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さらに、グラフが作り上げられ・・。

できたグラフがこれ。

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すごー。さすが数値の理系の人だ。

この資料はすごく強い味方だ。数値の裏打ちですから。

この6ページに渡る表とグラフを人数分コピーしてIEPに挑んだ私。

まず学区の言い分は

渡は特別支援学級に4割もいないので、ゴールは、半分カット。

と言って、たった2日分の時間割しか出して来ていない。これでは数値の裏打ちはできません。

私の主張は

渡の特別支援学級に出席する時間は約6割。ゴールの変更は考えるけれど、4割もクラスに居ないという数値は間違っている。間違っているものに「はい、そうです。」とは私は言えません。新たに用意したゴールに変更してください。

けど、元々あった16個のゴールが多いと思えない私。さらに担任の先生は一言もゴールが多いとは言っていません。16個のゴールは行えると思ってるということです。

なので、ゴールがへらないように準備したゴールに2つには、4つのゴールを2つにまとめたものにしました。

たとえば、どのようにしたかというと、(これは例です。)

ゴール1. 10のパラグラフの英文が読めるようになる。

ゴール2. 10のパラグラフの英文を読み、感想文を5文以上書く。

というゴールを

変更後ゴールの1,11のパラグラフの英文を読み、感想文を5文書く。

と変えた。

よーするにゴールはひとつになっているが、ゴールは自体は減ってない訳です。

学区の人もゴールの数を減らすという任務だけを上から指示されてるようなので、数を減らしたように見せて、新たなゴールを作ってあるので、これ以外に道はないなと思っている様子。これで誰の顔もつぶれないし、全員が幸せです。クラスの先生もゴールが多く大変とは一言も言ってないので、予算の為だけに渡のゴールが減らされるのは火を見るより明らかです。

私は上記の自分の主張をする時に7枚の開発リーダーが作成した数値表と円グラフをみなさんに配りました。相当みなさんびっくりしてました。なんだか、ロイヤルストレートフラッシュを出した感じ。けど、この数値表と円グラフさえも読めないセラピストや専門家が何人かおり・・いや、せめて円グラフは読んでもらいたい・・・・。と思う私。

すでに参加者がヘンに言い返すと自分の算数理解力がないというのが露呈してしまう。という雰囲気が流れました。

突然、特別支援教育の責任者が

「お昼ご飯は週に何時間あって・・。」と言い始めたりしました。

「えっ?お昼時間は野放しなんですか?渡はクラスのみんなで食べてると思いますし、前回はお昼もカウントしていましたよね?ということは、お昼は学校にいないんですか?」

「・・・・・」

問題がすり違えられている。こういうのは、話を戻さねばなりません。

結局、表とグラフを全員が理解できるように説明し、みんなが納得したので、私が提案したゴールに差し替えて、表面上のゴールの数は2つ減り、中身は変わらないままのゴールが14個できました。完全に特別支援学校ですごしていた頃は、25個以上のゴールがあったので比率的にも無理なゴールではありません。

ほんとに手のかかるIEPです。けど、やはり渡は人よりお金がかかるのは事実です。なので、きちんとメンバーに証明し、みんなに理解してもらって納得してもらう事というのは大事なので、これくらいの手間ひまは仕方ないのかもしれません。


けど、他の人の話を聞くとIEPのゴールが3個や4個しかない人もいるそう。数が少ないから駄目というのではないのですが、やはり、目標が少ないまま1年間のクラスを過ごすというのは先生やセラピストも大変です。

「クラスでコンピューターやテレビにお守りをさせるようなプログラムに入っているのですが、どうしましょう?」

という相談も複数うけます。きちんとIEPのみんなで認識した目標がある。というのは、子どもも学校で力を発揮しやすくなりまし、先生も困りません。目標が誰にでもわかるはっきりしたものであるため、多くの人の助けも借りれます。

さて新たな目標もできました。渡は数学、体育、英語はがんばっているようです。あとは、しっかり決まった特別支援学級でのゴールを少しづつ達成していってもらって、充実した高校生活を送ってほしいと思う私です。