自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

自閉症や、会話の苦手な方たちの支援ツール「Voice4u」をリリースしました。


iPod TouchiPhoneで動作します。日本では3500円で、Apple社のApp Storeと呼ばれる

インターネット上のお店で販売されています。日本語版と英語版の2つ種類があります。

サイトはこちらです。

http://voice4uaac.com/jp/


日本では12月16日に日経産業新聞の一面に、

アメリカでは、Wall Street Journal,

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アメリカ自閉症協会などで紹介されています。

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この製品はそもそも私が、「もっと子供が自然に使いたいと思うものを作りたい。もっと安いものを作りたい。コンパクトで軽く手軽に持ち運べるものがいい。」と思ったことがきっかけで始まりました。アメリカで使うコミュニケーション支援デバイスは、7000ドル(80万円)もして、使いにくい上に大きくて重かったのです。他のiPhoneアプリもためしてみましたが、複雑怪奇で渡は使えませんでした。たった数秒で2万円近くが無駄になりました。

ということで、このようなことが起らないように、このブログでも皆さんのアンケート結果を参考にさせていただきました。ご協力頂いた皆様、ありがとうございます。皆様の意見を取り入れながら生まれたVoice4uです。本当にありがとうございます。その他には、スピーチセラピスト、先生、専門医師、親たち、弁護士の数えられないくらい多くの人たちの協力を得ながらの作成になりました。

特に絵に関しては、シリコンバレーで25年以上もスピーチセラピーをされてる方等の意見もいれました。「髪の毛や服をアイコンの人間に着せると、子供が集中しなくなり、言語の伸び率が違うので描かないほうがいい。」というプロフェッショナルな意見も頂きました。色ははっきりした色を使ってインパクト加えるといい等々もご指導いただきました。音声においては、聴覚が敏感な自閉症児が苦手じゃない音の高さで、クリアな単語を話せる声を大勢の中から選んでいただきました。(普通の人が聞くとちょっと低めだと感じる声ですが。)

操作をするためのユーザーインターフェースは、上下に指で流すだけで触れるものにしてもらったり、医師の方の意見で順序やカテゴリーを見やすくして入れる等も行いました。親御さんの意見で、持ち歩きやすいものがいいとか、とにかくシンプルな機能で使い始めるのに時間を要しない、簡単なのがいいという声も入れました。


作っているうちについつい「この機能も追加しよう。」とか、「これもあれば便利」とか、いろいろな事も考えました。が、専門家や親たちの「シンプルなものじゃないと子供が使えない。まずはシンプルなデバイスで、集中してAACに慣れる。機能をたくさんのせすぎて、使えなくなったデバイスは数えきれない。楽しんでAACになれる。」といわれたので、超シンプルから始めました。


自分で1000近くの絵や写真とセンテンスを足すこともできますので、子供さんのこだわりのあるものも足せます。

うちの渡は、なにも使い方を教えず、ためしにただ渡しただけですが、1分以内に使い方を把握して、一番に美女の写真を撮影して自分の声で、”I love you”と録音しておりました。

それくらい使い方は簡単です。



このアプリをアメリカと日本で同時にリリースしてから数週間が経ちました。使った方々から

「全く話せない息子ですが、ディズニーランドで大好きなキャラクターと挨拶して会話ができた。」

とか

「これで挨拶しはじめたら、近くの人もあいさつしてくれて子供の世界がひろがりました」

とか、

「デバイスは携帯すると重くて、思春期になると持つのも嫌がります。けど、iPodなら小学生から大学生まで持ってる人が多いので、すごく自然だしかっこいいし、周りの人たちもすぐに理解してくれるので、子供が助けをもとめやすくなった」

と言うメールを頂きました。

ディズニーランドでは、うちの渡も同じようにVoice4uをつかって、(案の定) お姫様をナンパしようとしたので、やはり我が家の渡も同じように使いたくなるのかもしれません。


他には、自閉症のご家族の前で製品を見せながら、その3人の子ども達とお話していると、彼らは1分以内に操作を覚えて、次から次へと自閉症の兄弟が好きなものを撮影して、アイコンをつくりはじめました。


お母さんの

「どうしてこれ (Voice4u)をつくったの?」

という質問に、私自身の渡の子育てのことを話していたら、お母さんの方が涙ぐまれて

「わかるわーうちもよ。ほんと、よくこういうのを作ってくださった。」

と言われ、感動しきりです。お互い自閉症の親ですので、言葉の一つ一つの中にある同じ苦労が伝わってしまうので、ついついお母さんも自分のことを思い出されるのですね。


作るまでは大変でしたが、1人でも多くの子供さんが笑顔になれば、作った苦労なんていうのはどこかにいってしまいます。

少しでも皆さんのお役に立てばと願っております。