自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

~豪邸編~

1月は渡の悪事を書いていきます。

以前、このあたりのコミュニティ誌に2年ほど連載しておりました。

渡が2歳の頃の話しです。用事があって、Los Altos Hillにいきました。

用件をすませてゆっくり運転しながら、さすが、豪邸街といわれるだけあるなぁ・・・。よくもこれだけ大きな家がつくれたものだ・・。と感心して、帰路についていました。

すると途中で、新築の豪邸のOpen House(誰でも勝手に中に入って見られる見学会)をやっていたのです。

「このチャンスを逃すと、私は一生豪邸に足を踏み入れることはないだろう。アメリカの豪邸を見てみるのも、話しのタネにはいいだろう。」と思い、愛車のおんぼろボローラ(もとい、カローラ)をその家の前にとめました。私と、子供2人は、おそるおそる豪邸に足を踏み入れました。

入ったとたん、玄関は大理石。その玄関の広さだけでも、東京で住んでいたアパートよりはるかに大きい。そのうえ、もちろん吹き抜けなのです。おもいっきりボールを天井に投げても私の力では届かないな?と思うくらい高い天井です。入ってすぐのリビングには、豪華な家具が。モデルルームなのに、見栄えがいいように、家具まではいっているのです。

不動産屋さんが出てきて、

「どうぞ!入って!!」といわれました。

けど、こんな豪邸を普通の人間が買えるわけはありません。私は正直に

「ちょっと見てみたかっただけなのだけど・・」

というと、不動産屋さんも

「こんなのなかなか買えやしないもの。誰も見さえもしないのだから。歓迎するわ。さっ、はいって。はいって。」

と言ってくれるくらい彼女は、とてもヒマそうなのです。日本人の習慣で、靴を脱ぐと、不動産屋さんがありがとういって、リビングや台所(まるで、料亭の台所のように広い)を見せてくれました。

 

それから、

「いいところを見せてあげるわ」

と子供が遊ぶためだけの目的で存在している部屋に連れて行かれました。そこには滑り台や、ジャングルジム、ブランコまであり、渡と香穂(当時5歳)は大騒ぎ。

彼らにとっては貸切りのパラダイスです。不動産屋さんは、

「子供たちも楽しそうだから、ここへ子供たちをおいて、あなたと私は2階を見ましょう」

と2階へと足を運ばせました。

各部屋には、もちろんお風呂が備えつけられ、そのうちのひとつは大きなジャグジーで、そこからは、サンノゼが見渡せます。私は、

「3度のご飯よりお風呂が好きな渡を1回でいいから、これだけ大きくて、素敵なお風呂にいれてあげたい!」

と思ったほどでした。

私は不動産屋さんと一緒に隣の部屋へゆき、つぎつぎと部屋を見せてもらっていると、突然!!!

ドッドッドッドーーーーっ


という地震のような地響きがしたのです。

音は、どうもあのさっきの展望ジャグジーのあたりから、聞こえるのです。私と不動産屋さんはあわてて、音のするほうへいきました。

2人で走ってゆくと、そのジャグジーのある部屋から、ものすごい勢いで、上半身は裸、ズボンはヒザで止まったままの渡が、走ってでてきた。彼の顔には緊急事態発生!と書いてあるのです。

「えっ!何?何?なにがおこったの?」

理解できない私はジャグジーをみてわかりました。

彼もこのジャグジーがいたく気にいったようで、入ろうしていたのです。

そのために服を脱ぎ、喜びいさんで、おもいっきり蛇口をひねったら、新築の家だったので、水道管に入っていた、空気がお湯で押し出され、水道管をゆらし、それがものすごい音をかもし出して、ジャグジーへと出てきたのです。


その音に驚いた渡は入浴どころではない!と思って、あわてて逃げてきたのです。

ズボンを上げる余裕もなく、ジャグジーには、渡のぬぎすてたシャツがおちていた。

私が入れてあげたいと思うまでもなく、もうすでに入ろうとしていた彼でした。

 私は、不動産屋さんに平謝りで、彼女はお腹を抱えて笑っていて、渡に、

「私もアナタの気持ちは、よくわかるわ。私だって入りたいもの・・」

と言ってくれ、私は、無事に、その家を後にしました・・。豪華なジャグジーに入りそこねた渡ですが、彼はいまだに小さな我が家のお風呂でも大スキです。

いつか大きなお風呂にはいれるといいね!渡!!