自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

目指せ!映画スター!!な、自閉症の渡

香穂の大学はまだまだ続き、ついにファイナル(学期末テスト)最後の週。ほとんどの大学はファイナルが終わり、彼女の通学の電車の中にも学生の姿が消えたそう。

香穂の大学はまだあります。

5週間かけて、学期末テストの提出作品を4教科に渡って作ります。これらの作る作業が入る4教科を一つの学期で取るというのは異例の多さで、娘は、大学時代の専攻を舞台芸術から大学院では、アニメーションに変更したため、専門の数科目が遅れている感じなので、彼女はガッツで乗り切ろうと思った模様。

本当にこの学期は大変で、朝の5時半から起きて、帰りが10時。そこから宿題して...。っていう学期だったのでした。

さて、このファイナルの一つの教科で、映画作成がありました。5分の映画を先生に教えてもらった手法を入れ、音声を入れずに撮影し、編集作成して行きます。香穂はこの科目がどうも苦手。けど、必須なので取らざるを得ない。

遠距離通学(日本で言う小田原ー東京間で小田原駅から長い自宅への道がある感じ。)の彼女は、まずこういう課題はとても不利だそうです。多くの生徒は入寮しているため、寮の友達に映画作成にあたっての出演を頼めます。さらに、寮内に居る間に撮影が出来たりします。通学に片道2時間近くかける彼女は、出演者との撮影時間の調整も非常に難しいし時間確保も困難なので、家族の力を借りながらの撮影になります。他の自宅通学者も家族や親族が総出だそう。

我が家の香穂も家族で撮影、と言っても渡と私。とくに渡なんて、どこまで役にたつのか?という感じです。

ところが、香穂は、渡を主役に抜擢。私は、

「えっーー。ファイナル落とすよ。落第点になっちゃうよ。」

と心配しました。だって、この撮影期間は、丁度、渡もテスト続きで非常に精神が不安定。

けど、

「大丈夫」

と言う香穂。

さて、渡への説明です。

渡。私は映画を作らないといけない。で、映画スターになってもらいたいんだけど...。そう、ディズニーのお姫様と同じだよ。映画に渡が主役で出るんだ。

お姫様という言葉に弱い渡。もう目を輝かせて、二つ返事です。大丈夫か???

僕は映画スター。

と自慢げ。けど、いいのか?騙しているような気もする私。

香穂いわく、

大丈夫。だってこの映画、音声は入れてはいけないので、渡は好都合。それに渡は結構やるよ。みんなが気がついていないだけだよ。

ということで、さて撮影。

数日に渡って撮影したのですが、これはすごく疲れる。

カメラがどこから回るのか?どこから笑えばいいのか?そういう察しがつかないので、まだ笑わなくてもいいのに、笑顔を長く作って顔の筋肉がつりそうになったり。香穂から

私が「アクション」っていったら笑うんだよ。

と言われても、なんだか緊張して早めに笑ってしまうし。山登りのシーンがあったりもしたので、大変でした。俳優さんが体力勝負というのがよくわかりました。

渡は、香穂の指摘通り、結構上手い。驚いた。私は香穂に注意されても、どうしてもカメラのレンズを見てしまうのだけど、渡はそういう事はいっさいしない。さらにどういうシーンをとるか?というのをお姉ちゃんから説明をうけて、下書きの絵(台本みたいな感じ)で示されているので、撮影が終わったシーンは自分でチェックをいれて消して行っています。

どんどん出来上がりがわかるので嬉々としています。けど、その日の撮影が終わるとぐったりという感じでした。

全撮影が終わり、お姉ちゃんが編集したものをみせてもらって、大満足の渡。

さて提出日が今日でした。

クラスみんなで映画を見て、評価をします。お友達で「映画監督志望」で映画作成学部の子の映画はマジですごかったり。泣けるような映画を作る生徒もいたり。香穂は見ながら、泣いたり笑ったりで大変だったそう。映画監督志望の生徒の映画は学校での大会出場が決定。こういう大会に企業の人がきて見たりして人材を探すそうです。香穂はその生徒と仲良しだったため、我が事のように

「よかったねー!よかったね!!」

と言って2人で喜んでいたそう。

香穂の番もやって来て、香穂が見せたら、みんなが「かわいいね。この映画。」とか言ってくれて、先生もすごく褒めてくれたそうです。なんと、香穂の映画も大会出場が決定。このクラスからは、この2本が大会にでるそうです。

香穂によかったね。と言っていると香穂も喜んでいましたが、

私はこの実写を作るこの授業が、今、取ってる中では一番苦手だった。私が実写の映画の道に進む事はまずないので、褒められてみんなに認められたのは嬉しい。大会は嬉しいのだけど、なんか、ちょっと微妙。

けど、お友達が選ばれたのは、本当によかった。誰よりも頑張っていたし。どんどん大会でも残ってほしい。あと、渡にさ、ムービースターだよ、って言っちゃったからさ。ちょっと心が痛かったのだけど、これで上映されるから、ほっとした。渡に言った事が本当になったから、よかったよ。あと成績もこれで悪いということは、ほぼないので、いい成績で突破できると思うよ。よかった。友達が賞をとれればいいなー。彼女と私のは本当に違うんだよ。むちゃくちゃ上手い。見せてあげたいくらいだよ。

大会出場手続きの為に、いつもよりはるかに遅くに帰って来た香穂。

渡にも大会にでることを香穂から説明したら、彼も理解してちょっと驚いていました。

そんなこんなで子供2人のファナルは、渡はお姉ちゃんに数学の王様のバッチを作ってもらって乗り切り、香穂も渡に映画に出てもらってファイナルの一教科を乗り切り。姉弟、力を合わせて乗り切っているファイナル週間です。香穂は、泣いても笑ってもあと3日で今学期が終わり。がんばってね!!