自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

問題の体育の授業

さて、先日の「渡が殴られた事件」があったので、体育の授業を見学してきました。こういうことを放置しておいて、うまくいったということはあまり体験したことがないので、見学。

体育の先生とはあまり長い時間お話した事もないので、もし話す事ができればいいな。とも思い。

さらに渡は、グループスポーツなどは難しため、どのように過ごしているのかも気になり。

今の季節はプールなので、水が好きな渡は結構ご機嫌はいいはずです。

行ってみるとプールは、深いダイビング用のプールと、普通のプールの二つがあります。

最初の数十分は、全員同じ普通のプールで受けます。

渡も相当行動に問題あるだろうと覚悟して行ったのですが、水に入ると高校生ですので、ハイテンションでみんなふざけるふざける。友達とふざけて遊べない渡が優等生に見える(笑)中には、ふざけすぎて、先生からTime outを食らう生徒も。

準備運動をしたりして泳ぎ方を習い、さて実践。全員がプールの端に並びます。

一斉に泳ぐと危ないので、各自で1~3番の番号をはしから振り当てて行きます。渡は一番端で1番です。

「はー、よかったねー。わかりやすいじゃない。」

と思っていると、これも先生の配慮だということがわかりました。というのも、後から遅刻してやってきた生徒がいてその子が、

「僕、端にいくから、1番」と言うと、先生が

「端の1番は渡だから、彼は1番と決まっているので、君は2番。」

あぁ、嬉しい配慮。体育は、小さなグループに分かれて行う事が多いので、渡は常に端で一番。一番という音が聞こえたら動けば言い訳で。これはわかりやすい。よく障がいがあると一番後ろにしようとする先生がいますが、後ろは一番むずかしい。どこが最後尾か?わかってなくても物事は進んでしまうし、後ろができてなくても、生徒は気にしないからです。一番前は、失敗したら周りもおしえてくれるし、渡も学びやすいのです。


さて、先生が教えて指示がでて、教えていただいたことを泳いで実践。1番と言われたら1番の人たちが泳ぐ。ところが高校生はふざけるので、きちんとできてる生徒が少ない。渡は、番号がわかっているので、指示通りにきちんとこなす訳で。律儀な自閉症の特徴がうまく生かされています。

さて、一通りが終わったら、先生がじゃ、分かれて!の声でプールの中から数名の男子がでてきて、深い方のプールに向かっています。なんだ?と思ったら助手の人が説明してくださって、

これは、試験にパスした生徒だけが、深い方のプールで泳げます。2割弱の生徒がパスしたのでダイビングボードをつかえます。こちらは上級班ということです。

だそうだ。そこに最後のほうでニヤけた渡が普通のプールからでてきて、深い方のプールへ向かっている。笑ってごまかそうとしてるな。と思ったら、先生が私のところにいらしてくれてプールの授業の説明です。

渡は、試験に合格したので、ダイビング用のプールです。彼は試験にパスしたことでとても自信がついている。見てもらえばわかるんだけど、周りの生徒も渡のことをよくできるとみとめているよ。

とのこと。

見てると、渡が飛び込む少し前になんとなく言語を使わず静かに飛び込み方を水泳部の生徒が教えていたり、渡が飛び込む瞬間に着水する場所は広くあけてくれてあったりします。飛び込みが成功すると、数名の生徒が手をたたいて喜んで、真面目に励ましてくれている。

たしかに渡は水が好きだし、なんだか、うれしそう。

先生といろいろ話すと

渡は、たしかにグループスポーツなどの複雑なルールが理解できません。作戦なども難しい。けど、彼は自分でこれはどうしてもできないな。とわかるとみんながグループの練習をしている間、ずっとグランドを走っています。クラスメートは彼のひたむきさを認めているので、とてもいい関係。

だそうです。あぁ、それで体育の成績がいい訳ね。絶対にできないことで点数をひかず、その分ほかのことできちんと努力したら、減点はされないんだ。へーっ。

とりあえず先日の事件の話は、どうも先生の口調からもともと問題があって暴力の多い子供だそうで、学校からサポートもうけている気配。

先生は、

「お母さんに渡の体育の授業ぶりをみてもらって本当によかった。彼は僕のクラスの自慢の生徒だ。」

と励ましてくださいました。

みんなの優しさと先生の配慮。ありがたかった一日でした。