自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

香穂の大学が本格的に始まります。

香穂の大学が本格的に始まります。

香穂は、アシスタントマネージャーとしての舞台があるので、昨年度からロサンジェルスに入って待機し、1月3日には、一番乗りで大学に入って、1月末から始まる舞台のリハーサルに立ち合っています。この劇は、ハリウッドの俳優も出演するので、その人のリハーサルに立ち会っていたようです。

大学の開始は1月10日。舞台関係の香穂の仲間達は、今日あたりから入寮です。

香穂が1月3日に入った頃は、30室以上ある寮の一棟に香穂がぽっつーーんと一人ボッチだったそう。

聞こえるものと言えば、真っ暗な深夜に鹿の歩く音くらいです。

そんな中、一人二人と寮生がかえってきて、華やかになりつつあります。

香穂の親友も帰ってきました。が、帰ってくるなり

「私、出てくる前にお母さんと大喧嘩しちゃったのよー。」

と言われたそうだ。

「どうしたの?出るときに喧嘩なんて出来ないよね?」

というと、これがすごい。

彼女が車に乗って、500km以上離れた大学に向かおうとすると、なんと車の中の後ろのシートが物で一杯!後ろが見えないくらい物だらけになっていたそうだ。

彼女がもう出ようと思って、荷物もきれいにパッキングし、車もきれいにしてあるのに、乗ろうとしたら、この驚くような荷物です。

彼女は、運転免許をとったばかりで緊張してるし、後ろが見えないくらい荷物をのせられると怖くて500kmも走れないので、お母さんに

「お母さん、この荷物、何?」

と聞いたらお母さんが

「全部大学に持っていきなさい。」

と言われたそうだ。

私のうわ手を行く

「母の心配、母の不安。」

という名前が一番似合う箱やら、物が山積みだったそうだ。やっぱアメリカ人は何でも規模がでかい。もう明らかに大学の寮にはすべて入らない量だったそうだ。

彼女は

「こんなことされたら、後ろが見えないから、危ないよ。降ろすからね。」

と言うと、お母さんが断固として降ろすことを認めず、喧嘩になってしまったそうだ。

彼女はブチッと切れてしまって、

「もう!!降ろすからね!危ないじゃない!!!!」

と荷物をおろし始めると、お母さんが泣き始めたそうだ。

このお母さん、実はお金があまりなく、それでも看護士として夜も朝も昼もしっかり働き、お兄ちゃんと彼女を育て上げてくれたそうです。

そんな母の姿を見ている彼女は、必死で勉強して大学の費用は、すべてスカラーシップでとり、1円(1セント??)も親に負担させずに、大学に入ったそうだ。彼女にしたら、この荷物はお兄ちゃんとお母さんが使ってくれればいい。とも思ったそうだ。

彼女は、お母さんに負担をかけないようにと必死で勉強して高い奨学金を得て、きちんと学歴をつけ、母を心配させないようにと日々努力しているようです。

お母さんは、お母さんで、毎日毎日お財布をやりくりして、スーパーや、ドラックストアで娘が大学で使えそうなものを一つ一つ買い集めていたにちがいありません。そのことに数ヶ月使ったと思われます。

こんなお互いの思いやり深い親子のちょっとした行き違いです。

けど、お母さんは最後には、車にしがみついて

「私があなたを育てた20年間に私がしたあなたが嫌だと感じたすべてのことは、今、ここで謝るから。」

と、わんわん泣かれたそうだ。

もうこうなってしまうと手がつけられない。

彼女も、もうどん引きで、どうしていいか、わからない。早くでないと寮の入寮締め切り時間に間に合わないので、慌てて出てきたそうだ。

案の定、このもめ事で遅刻して自分の棟の寮の鍵をもらう時間に間に合わず、寮には入れず、香穂の寮にやってきたそうだ。

なんか、もうこの話を聞いて私は号泣。

お母さんの気持ちは痛いほどわかるし、娘さんの気持ちも痛いほどわかります。

お互いが深く思いやっておきた喧嘩です。

みんな一生懸命生きてて、悲喜交々の新年のスタートです。