自閉症 渡の宝箱

自閉症の渡が、日々起こす騒動や療育についてとシリコンバレーでの起業、生活を綴っています。

スタンフォード病院の小児精神科医のすごい言葉

渡と私たちで、スタンフォード大学病院の小児精神科の検査に行ってきました。

きのう2時間(家族のみ)、今日9時間(渡が4時間の全般テストと、2時間社会性の検査、2時間の検査報告)の長丁場の検査です。

きのうの2時間の検査は、親のみの検査だったのですが、親よりも詳しく渡を熟知している香穂にも参加をお願いしました。

きのうの検査では、日頃の状態等を聞かれ、香穂が的確な英語で答えておりました。

今日の検査では、IQも検査するために次々と問題がだされます。先生は、4時間ぶっとおしで検査を行うつもりだったみたいですが、渡が驚くほど先生に協力的で、叫ぶことも、いやがることもせずに、3時間もかからずに終了。この先生が、初めて会う先生で、綺麗で渡の好みだったからかもしれません。先生も

「こんなに協力的で、早く終わったことはないわ」

と驚いていました。

午後からの検査で、担当してくださった先生は、なんと、渡が2歳の時に自閉症の診断を下してくださった先生です。あれから、13年。私たちは、この先生に一度もお会いしていません。

ところが、渡は、私にこっそり

" I know her."(彼女を知ってるよ)

と言って、笑いが止まらなくなりました。驚き!!

検査が全て終わり、私と香穂とで検査結果を聞きに行きました。

先生曰く

「渡は典型的な自閉症です」

と言われて、あとは、延々、どこが発達が遅れているか?の報告です。特に社会性の部分と言語の部分が異常に低く、

たぶん、これは、最初に診断を受けるときは、落ち込む人が多いようですが、渡の自閉症がわかって14年。そういう結果もどのように扱かって、どこに持ってゆき、どうやって渡の発達に活かせるのか?がわかっている私は、もう落ち込むどころか、やった!という感じです。

発達が遅れていると言われる部分は、IEP Memberにも教えて、また新たに課題が増やしてゆけば言い訳で・・。

香穂は、香穂で、山のような質問をお医者様にしておりました。香穂の質問例でおもしろかったもの。

1.最近、渡は人との距離の置き方が下手で、すごくくっついて来たりするんだけど、怒っていい?すごく嫌なんだけど・・。

2.クラスに明らかにアスペルガーだと思われる人がいるんだけど、どうやって接すればいい?例えば明らかに人を傷つける言葉を言うんだけど

3.渡は、ADDもしくは、ADHDだと別のサイコロジスト(心理)の医者に診断されたが、どうしてあなた達は違うと断言できるのか?その差はどこにある?

クラスメイトにも、ADHDの人は数名いて、とても渡の多動と似てるとことがあるのだが?彼らは、薬を飲み忘れると、症状がでて、それが渡と似ている。

お医者様の回答

1.自閉症であれ、自閉症でなくても、人を不快にすることはしてはいけません。怒っていいけどやってはいけないことは、ただ「だめ」とか「NO」いうだけというのは、いけない。渡は視覚で理解するので、根気よく、なぜいけないのか?を毎回説明すること。たとえば、あなたが言うように、人に近づきすぎると、人が不快になること。目の前に見てほしい紙等を近づけすぎると読めないことを説明します。

2.アスペルガーのクラスメイトも視覚が強い可能性が高いので、あなたは、漫画が得意だっていっていたので、そういう視覚で説明すればいいし、順序だてて、わかっているだろうとおもうことも、説明してゆく。こちら側がキレないことが大事。

3.私たちが渡がADDやADHDだと診断しない理由は、ADDやADHDの症状は、自閉症の子供でも併発する場合があるが、その症状がどこから来ているか?に起因します。ADDやADHDを併発している場合は薬を飲めば、多くの場合は、症状は押さえられます。渡の場合は、薬を飲んでも症状が押さえられないこと。検査でも症状がでているが、あきらかに、自閉症の症状からくるもので、これはセラピーや、彼の理解力に頼ってなおしていくことが一番有効であることが認められたから。香穂のクラスメイトの子供は、明らかに、薬を飲めば、症状が収まるが、飲み忘れると症状が出るというので、明らかである。

まぁ、検査結果は、さんざんで相変わらず発達も3歳時レベルがあるとおもいきや、15才以上のレベルの部分もあります。

典型的なでこぼこの発達の自閉症です。

けど、お医者様たちが力を込めていった最後の説明が感動的でした。

人間として産まれたからには、安全で、幸せでなくてはならない。これは、障害児であるとか、障害児でないとかは関係ない。検査中も、どうみても渡は、幸せそのものだったし、毎日を楽しんで、幸せに生きているのがよくわかった。IQのテストや、発達テストでは、その幸せ度をはかられることはない。高機能自閉症児の場合、社会の不理解や自分の理解力等から落ち込んで楽しく生きてゆけないことは多々あること。そういうケースが一番悲惨であるので、避けねばならないこと。幸せというのもは、ただ自閉症児の要求を飲むのではなく、周りが協力して、渡が、社会でも過ごしやすくしなくてはならない。あなたの場合は、そうやって渡を育ててきた姿勢が、よく渡に出ています。あなたのような親は、もっとたくさんの親にと一緒に協力し、親たちを束ねて他の親と一緒に、今後の活動もしてほしい。

渡は私たちの検査には、とても協力的だったし、人を思いやる気持ちは大変強いです。検査というのは、IQや、発達を計るもので、彼の幸せ度や、思いやりを計るところはないので、結果としては出ないが、人間としては、すばらしいことだ。

私は、現在自分が自閉症のPTAの団体に入っていたり、学校の活動等も協力的にやっていること、自閉症の理解をうながす講演会等積極的にやっていることを述べると先生は、すごく喜ばれて、

「たくさんの親がここにくるけど、あなたほど前向きで、自閉症を認めている親は少ないので、その活動は、ぜひこれからも行っていってほしい。私たちも出来る限りの応援はします。」

ということでした。すばらしい!なんて強い見方が出来たんだろう。


とっても楽しかった検査でした。香穂もお母さんのことを聞かれると、

「たしかに、母は、よく動き、よく働く母親である。けど、速度も早いので、付いていけないこともあるけど、常に子供側に立つ、いいお母さんだと思うよ。私にとっても渡にとっても・・。」

と言ってみんなを笑わせておりました。

最後に通訳の方が

自閉症の家族の方の通訳はよくするのですが、こんなに明るく楽しい診断結果の通訳をするのは、初めてです。ほとんどの方が暗く、中には、死にたいとおっしゃるかたもおられて、言葉がけにこちらが困る時もあるほどです。」

とおっしゃってました。

さてさて、この結果は後日文章で送られてくるそうですので、楽しみに待ちます。

追記・・・・綺麗な先生の検査の時。このような形で三角形の本を見ます。

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渡の側には問題。先生の側には、答えがあります。渡は、世界地図を見せられて、どこがまちがっているのか?を聞かれた問題のところで、わからなくなりました。

日本を確認したら、ちゃんと日本は載っていた。

すると、突然、いろいろなおもしろい顔をし始めた渡。その顔は”ひょっとこ”の顔などもあり、先生がのけぞって笑ってしまいました。そして渡は突然自分の手をさしだし、先生に、握手をしようと提案します。のけぞった先生は、手が届かない。渡は体を乗り出し握手をしながら、先生の側の答えを見て

「北アメリカと南アメリカが逆さまになっている!」

と答えておりました。先生に

「渡、カンニングしたでしょう?」

と言われて、また笑われました。なんだか、こういうところだけは、頭が働く渡です。

帰宅してから香穂に

「どうして渡は答えがどこにあるか?って探さないでも、わかるんだろう?」

って聞いたら

「あっ、それは、渡はいつも大人が答えを読むときにどこを読んでいるのか?目をみてるから、どこに答えがあるか?って探さないんだよ」って言われました。